プロボクサー時代の「胡蝶」こと竹中佳さん(徳川家康と服部半蔵忍者隊事務局提供)
プロボクサーが新天地で忍者に転身――。5月から愛知県の観光PR隊「徳川家康と服部半蔵忍者隊」に加わった、くノ一「胡蝶(こちょう)」こと竹中佳(けい)さん(32)は、かつてボクシング東洋太平洋女子ライトフライ級王者だった。「忍者をより魅力的な存在としてアピールしていきたい」と意気込んでいる。
兵庫県出身。大学卒業後、スポーツジムのインストラクターを経て高砂ボクシングジム(兵庫県)に入門。2012年にプロデビューした。左のストレートとカウンターを武器に、11勝(3KO)1敗の成績を残し、昨年末に引退した。
幼いころから忍者が好きだった。忍者の身のこなしへの関心が、武術につながった側面があるという。
引退後、求人サイトで「あったらいいな」という気持ちで「忍者」と検索すると、追加メンバーを募集していた忍者隊が目にとまった。ちょうど住んでいた関西のイベントに来ると知って出かけてみた。「外見だけでなく、忍者の精神性も大切に活動しているのが伝わってきた」。応募することにした。
忍者隊は、殺陣や口上を交えた「演武」が目玉のひとつ。趣味としてトレイルランニングやボルダリング、アクロバットにも親しむが、演技の経験はない。それでも、オーディションでプロボクサーだった経歴や忍者への思いが評価され、外国人を含む男女17人の中からメンバー入りをつかみ取った。
愛知県に引っ越し、4月から忍者や歴史について学んだり、パフォーマンスの稽古をしたりと「修行」に励む。「ゼロから一つひとつ覚えていくのが楽しい」と前向きだ。「胡蝶」という名前は、ボクシング元世界ヘビー級王者モハメド・アリの言葉「チョウのように舞い、蜂のように刺す」から来ているという。
「謎が多い忍者だが、マンガやアニメのイメージではなく、史実に基づいた姿を伝えたい」と竹中さん。演武に加え、観光客とのふれあいも楽しみにしているという。(原知恵子)
◇
〈徳川家康と服部半蔵忍者隊〉 愛知県を拠点とする観光PR隊で、2015年に結成された。徳川家康に仕えた服部半蔵とその配下の忍者からなる。中部空港をはじめ、各地でショーを披露したり、手裏剣体験会をしたりして観光客をもてなしている。