米事務機器大手ゼロックスは13日、富士フイルムホールディングスによる買収計画について、合意を破棄したと発表した。買収に反対していた著名投資家のカール・アイカーン氏ら大株主2人と和解した。混迷を深めた買収劇は、白紙に戻ることになる。
富士フイルムと買収交渉を進めたジェフ・ジェイコブソン最高経営責任者(CEO)らは辞任し、経営陣も入れ替えた。
米ゼロックスは13日夕(日本時間14日朝)、富士フイルムに買収合意の撤回を伝えた。理由として、両社の合弁会社で、不正会計問題があった富士ゼロックスの監査済み財務諸表が期限までに届いていないとしたほか、「買収契約の実行を難しくする状況」を考慮したという。
米ゼロックスの旧取締役会は声明を出し、「この数週間にわたり、買収条件の向上をめぐる交渉を何度も求めたが、富士フイルムは許容できる時間内に応じる約束をしなかった」と指摘。米裁判所が買収手続きの一時差し止めを命じたことや、株主から現買収案に支持が集まっていないことを踏まえ、「買収の完遂は期待できない」とした。
和解の一環として、ジェイコブソン氏やロバート・キーガン会長ら6人が米ゼロックスの取締役を退いた。代わりに、大株主側が推す新CEO候補のジョン・ビセンティン氏ら5人が取締役に指名された。新経営陣はすぐに会合を開き、「株主価値を最大化するための戦略的な代替案」の検討に入るとしている。
一方、大株主側は株主総会での委任状争奪や、買収差し止め訴訟を解決させるとしている。アイカーン氏は「支配権を富士フイルムに渡す軽率なスキーム(枠組み)を破棄したのは、極めて喜ばしい」とコメントした。
富士フイルムは14日、「(米ゼロックスに)本案件を一方的に契約終了する権利はなく、そのような決断に至ったことには抗議する。今後訴訟や損害賠償請求も含めた適切な手段をとっていく」とのコメントを出した。
富士フイルムと米ゼロックスは1月末に買収合意を発表。富士フイルムが追加の現金支出なしで米ゼロックスの経営権を握る内容に、アイカーン氏と実業家のダーウィン・ディーソン氏が「ゼロックスの価値を過小評価している」と反発。米ゼロックスは5月に入り、いったん大株主側と和解に向けて合意したが、2日後に合意を失効させて再び富士フイルムとの共闘路線に戻るなど迷走し、混乱を極めていた。(ニューヨーク=江渕崇)