記者会見するジャパンディスプレイの東入来信博会長兼CEO=2018年5月15日午後3時29分、東京都港区、北川慧一撮影
経営再建中の液晶パネル大手、ジャパンディスプレイ(JDI)が15日に発表した2018年3月期決算は、純損益が2472億円の赤字だった。赤字は4年連続で、過去最悪の水準になった。主力とする高級スマートフォン向けパネルが不振で、従業員を3割弱減らすなどのリストラ費用1422億円も響いた。
売上高は前年比18・9%減の7175億円。主取引先の米アップルが、スマホの高級機種のパネルを韓国サムスン製の有機ELに切り替えた影響が大きい。競争激化による価格低下や販売数の減少で、材料費や工場の経費をまかないきれない「原価割れ」の状態だった。営業損益は617億円の赤字(前年は185億円の黒字)に転落した。
リストラ費用は、稼働率低下で茂原工場(千葉県茂原市)などの評価を見直す減損処理を行って約1千億円、中国の工場閉鎖にともなう従業員への補償などで約150億円を計上した。
財務の健全性を示す自己資本比率は1年前より20ポイント超悪化して13・1%に。海外ファンドなどに新株を買ってもらう増資を4月に実施して350億円を確保したが、それでも18%程度にとどまる。
さらに筆頭株主である政府系ファンドの産業革新機構に能美工場(石川県能美市)を約200億円で6月までに売却する予定だ。JDIはもともと、日立製作所、ソニー、東芝のパネル事業を、政府主導で統合して12年に発足。これまで同機構から計2750億円が投入されたが、追加の支援を受ける。
19年3月期の業績予想は、売上高が10~20%増え、営業損益が黒字になると見込んでいる。有機ELパネルへの切り替えが想定ほど進まずに、スマホ向け新型液晶パネル出荷が大幅に伸びるとみる。このため、有機ELを19年から量産化する計画は先送りする。東入来(ひがしいりき)信博会長兼最高経営責任者(CEO)は「風向きが変わった。液晶はまだまだ生き残る」と話し、量産化の時期は明かさなかった。JDIが15%を出資する有機EL開発会社、JOLED(ジェイオーレッド)を子会社化する計画は、既に撤回済みだ。
また、6月19日の株主総会終了後に有賀修二社長兼最高執行責任者(COO)が退き、後任に月崎義幸副社長が昇格する人事も正式に発表した。(北川慧一)