容疑者の逮捕から一夜明けて登校する児童たち=2018年5月15日午前、新潟市西区、小玉重隆撮影
新潟市西区の市立小針小学校2年、大桃珠生(たまき)さん(7)が殺害されて線路上に遺棄された事件で、近くの会社員小林遼(はるか)容疑者(23)が14日夜、死体遺棄などの疑いで逮捕された。「事件が地域に与えたショックは計り知れない」。子どもたちの安全安心を取り戻そうと、地域の取り組みが続く。
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大桃さんが通っていた小針小近くの交差点では15日朝、見守りボランティアの岩原三男さん(71)がいつも通り、子どもたちに声をかけていた。容疑者逮捕を受け「とりあえず一安心だが、模倣犯もいるかもしれない。警戒は続けていかないと」と唇を引き締めた。
岩原さんは40年ほど前から同小校区に住み、8年前から見守り活動を始めた。「かつてない悲惨な事件で、地域に与えたショックは計り知れない。子どもたちに安心感を与えるためにも、今まで通り、普段通り、見守っていきたい」と話した。
小学1年の娘と一緒に登校していた30代女性は、事件後から付き添いを始めたという。「事件の後、不審者情報のメールにこれまで以上に敏感になった。しばらくは付き添いたい」と話した。
容疑者の逮捕を受け、小学4年の男児の父親(41)は「登校の様子も少し明るくなった」と感じたという。外出時はこまめに電話をするよう伝え、塾の送り迎えも徹底するようになった。自分の子どもだけでなく、周囲にも目が向くようになった。「地域一丸となって防犯対策を進め、一歩、一歩進んでいきたい」
現場近くに設けられた献花台には、この日も朝から祈りを捧げる人の姿があった。午前8時ごろ、曽山キヨ子さん(73)は献花台の前でハーモニカを取り出し、10分ほどかけて「こいのぼり」や「ふるさと」などの童謡を演奏した。
小学6年の女の子の孫がいるといい、珠生さんの姿が重なったという。「珠生さんの魂が安らかに眠れるよう、心を込めて吹きました。容疑者が逮捕されても珠生さんは帰ってこない。絶対にあってはならない」と涙ながらに話した。
小此木八郎・国家公安委員長は15日、閣議後の記者会見で「残忍極まりない、むごい事件。どのような経緯でこんなことに至ったのか、犯行の経緯をしっかりと捜査していく」と話した。
新潟市西区の市立小針小学校2年、大桃珠生(たまき)さん(7)が殺害されて線路上に遺棄された事件で、死体遺棄などの疑いで逮捕された小林遼(はるか)容疑者(23)が現場近くに住んでいたことに、地元では驚きが広がっている。
近所の人たちによると、小林容疑者は地元の小、中学校を経て、県内の工業高校に進学したという。小林容疑者の自宅近くに住む女性は「おとなしくて、いい子だったのに、と家族がショックを受けている」と話した。
近所の男性(76)は「ご遺族が一番つらい。一方、容疑者の家族のことも考えると……」と複雑な表情を浮かべた。男性には幼稚園に通う孫がいるといい「事件が起きてからは、外で遊ばせることができなくなっていた。早く平穏に戻って欲しい」と話した。
小学校長「怒りは変わらない」
小林容疑者の逮捕を受け、大桃さんが通っていた小針小学校の長谷川豊校長は市教委を通じて「少しほっとした気持ちです。しかし、珠生さんはもう戻ってきません。憤り、怒りは変わりません」とのコメントを出した。
「ご遺族の悲しみを思うと、胸が張り裂ける思い。死を悼み、心の中は悲しみでいっぱい」と記し「子どもたちの日常を一日も早く取り戻すために、職員で全力を尽くします」とした。