月に240時間以上の長時間労働をしている男性が、2007年からの10年間で約3割減っていたことが、東京大学社会科学研究所の石田浩教授らの調査でわかった。帰宅時刻も早まる傾向にあり、石田教授は「家族と交流する時間が増えているのではないか」と分析している。
調査は働き方とライフスタイルの変化を追跡するため、07年から同じ個人を対象に実施し、対象者が抜けた場合などは新しい個人を加えている。17年は3~5月に実施し、約3400人から回答を得た。
10年間の変化を分析したところ、月に240時間以上働く人の割合は、企業の正社員など「典型雇用」の男性で35・4%から23・7%と約3割減少した。契約社員やアルバイトなど「非典型雇用」の男性も、17・3%から8・2%と半減した。女性の長時間労働をみると、典型雇用の人は12・1%から8・2%、非典型雇用の人は3・2%から1・1%になっており、やはり減少傾向だった。
働く人の帰宅時刻も、早まっていた。働く男性の平均帰宅時刻は07年に午後8時2分だったが、17年は同7時48分で、14分早かった。また、働く女性は午後6時48分から午後6時1分と、47分早まった。若い層でも深夜の帰宅が減っており、30歳以上35歳未満の働く男性で午後11時から午前1時までに帰宅する割合は、11%から4%になっていた。
調査によると、帰宅時刻が遅いほど「夫婦で一緒に食事をする」「夫婦で話をする」人は減る傾向にある。特に、帰宅時刻が午後11時以降になる男性は、午後8時から同10時に帰宅する人と比べ、「一緒に食事をする」割合が急激に減るという。
明治大の永野仁教授(労働経済学)は、「08年のリーマン・ショックの影響で労働時間が一時的に短くなっただけなら、景気回復とともに再び長くなっているはずだ。長時間労働に対する関心が社会全体で高まり、企業が労働時間を減らす取り組みなどをした効果が表れているのだろう」と評価する。(杉原里美)