南米コロンビアで27日あった大統領選は、現職のサントス大統領が結んだ左翼ゲリラ・コロンビア革命軍(FARC)との和平合意の見直しを訴える右派候補がトップ、2位に合意尊重を唱える左派が続いた。和平合意で半世紀に及んだ内戦が終わったが、合意への賛否を巡ってコロンビア社会は分断を深めている。
選挙管理当局によると、右派で和平合意の見直しを訴えるイバン・ドゥケ前上院議員(41)が39・14%の得票率で1位。合意を尊重する別の左翼ゲリラ出身のグスタボ・ペトロ前ボゴタ市長(58)が25・08%で続いた。いずれも過半数獲得には至らず、6月17日に決選投票がある。
FARCとの和平合意で2016年のノーベル平和賞を受賞したサントス大統領は、中道右派のヘルマン・バルガス前副大統領(56)を支持。だが、「極端な選択はすべきではない」と訴えたバルガス氏の得票率は7・28%と4位にとどまり、決選投票には進めなかった。
ドゥケ氏は、和平合意の結果、FARCの元幹部らが処罰されていないことなどを問題視。FARCが麻薬密売に関与してきたことから「麻薬密売者との交渉は認めない。正義を伴う平和が必要だ」と主張した。大統領選では、こうした主張が一定程度、受け入れられた形だ。
内戦で25万人超が死亡・不明
コロンビアでは内戦の結果、死者・行方不明者が25万人を超え、少なくとも500万人以上が国内避難民になった。和平合意により合法政党に移行したFARCだが、国民の間にはなお不信は根強い。和平路線に反対し、今もゲリラ活動を続けるFARCの分派組織もある。4月には隣国エクアドルの記者たちが殺害された。
一方、貧富の差が左翼ゲリラを生む温床ともなったのも事実だ。合意の継続を唱えた左派のペトロ氏は「暴力がコロンビア社会の不平等を助長してきた」とし、平和を維持しながら社会保障を拡充する必要性を訴えた。
分断された世論の溝は埋まらぬまま、6月の決選投票を迎えることになる。(サンパウロ=岡田玄)