メルちゃんシリーズで遊ぶ親子=パイロットインキ提供
人形を使った「ごっこ遊び」は子どもの心を育む――。古くから言われてきた説を、慶応大文学部赤ちゃんラボ主宰の皆川泰代教授(発達認知神経科学)とロングセラーの抱き人形「メルちゃん」シリーズを手がけるパイロットインキ(本社・名古屋市)が、心理学的実験で実証した。研究成果を東京おもちゃショー(7~10日)や7月の日本赤ちゃん学会で発表する。
皆川教授らは、2歳半~3歳半の女児とその母親59組に台本に沿って、ままごとを5日間(1日20~30分)してもらった。台本は、人形を使って心の状態を言葉で伝えながら遊ぶ場合と人形を使わないで行う場合、人形を使わず心の状態も言葉にして伝えない場合という3種類を用意。台本のグループごとに、ままごとの前後でどんな心理的特徴の変化が起こるか検証した。
その結果、母親が人形を介して「(お人形は)お風呂に入って楽しそうだね」「おなかがすいて泣いているのかな?」などと心の状態を言葉にして伝えたグループの子どもたちは、視線や身ぶりなどで他者と気持ちを共有する力や「自分の心の動きと他者の心の動きは違う」ことへの理解度が顕著に伸びたという。
皆川教授は「親と子が1対1の関係で遊ぶより、人形が介在した方が『他者の気持ちを理解する』行為が自然にできるようになる」と指摘。「ごっこ遊びは言葉、認知、社会性の発達を伸ばす『遊びの頂点』と言われているが、人形を採り入れる有用さが数値で客観的に裏付けられた」と説明している。これまでの研究は、アンケートや聞き取り調査など主観的なものが多かったという。
同社によると、「年間10万個でヒット」という玩具業界で、メルちゃんシリーズは発売から年数がたっても30万~40万体台の出荷数があり、25周年にあたる昨年はシリーズで計約50万体が売れた。(原知恵子)