「信じなければ、物価も上がらない」。日本銀行の黒田東彦総裁は15日の金融政策決定会合後の記者会見で、米欧の中央銀行が金融政策の正常化に動くなか、あくまでも「2%」の物価目標の達成へ金融緩和を継続する意思を語った。記者団との主なやりとりは次の通り。
もはや米欧と逆方向へ 日銀「現状維持」の強弁いつまで
日銀、金融緩和策は「現状維持」 政策決定会合
――米欧では金融政策の正常化が進んでいます。日本だけが「おいてけぼり」との指摘もあります
「各国の金融政策はそれぞれの国の経済・物価動向に即して適切に進められるべきで、欧米でも適切に進められている。我が国の場合は、持続的な成長のもとで労働需給も引き締まり、需給ギャップもタイト化しているが、物価の上昇率はなかなか上がらない。やはり、現在の強力な金融緩和を粘り強く進めていくことが、日本にとっては適切だ。(米欧と日銀の政策の)方向性が異なっているのは、(それぞれの)経済・物価の状況を反映したためだろう」
――米欧に比べて、日本はなぜ物価が上がりづらいのでしょうか。日本独特の事情があるのでしょうか
「我が国独自の特殊要因として、やはり1998年から2013年まで15年続いたデフレと低成長が、一種のデフレマインドとして企業や家計に残っていることがある。そのため、中長期の予想物価上昇率がなかなか上がってこない。これは欧米にはない要素だと言えると思う」
――先進国で物価が上がりにくい共通の理由はありますか
「様々な議論がある。たとえば『アマゾン効果』。これまで消費者がモノを購入するマーケットは地理的に制約されていた。だが、今は、消費者がインターネット上で全世界のモノやサービスの価格を比べたうえで購入できるようになり、モノやサービスの価格が上がりにくくなっているのでは、という議論だ」
――総裁は今も2%の物価安定目標が達成できると信じていますか
「信ぜよ、さらば救われん、と言うつもりはないが、信じなければ、物価も上がらないなと思う」