「終活」を考える
独身できょうだいもおらず、一人暮らしを続けてきましたが、体の衰えを感じます。今後の生活や死後に備えて考えておくべきことはありますか。
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単身者や、子のいない夫婦で配偶者に先立たれた人など「おひとりさま」は、体が不自由になった時の支援や、死後の葬儀や遺産整理などを誰が担ってくれるかを事前に考える必要があります。例にそってみてみましょう。
埼玉県の70代男性のAさんは一人暮らし。きょうだいはなく、結婚したこともありません。先日友人の葬儀でふと、自分の葬儀は誰がしてくれるか不安になりました。
神奈川県に住む70代女性のBさんも一人暮らし。妹とおい、めいがいますが、迷惑をかけたくないため頼るつもりはありません。体の調子が悪いため思うように外出できず、買い物などで困っています。AさんもBさんも、今後が心配です。
2人のような「おひとりさま」が知っておきたい制度は四つあります。①任意代理契約(財産管理等委任契約)、②任意後見契約、③死後事務委任契約、④公正証書遺言です。
任意代理契約は判断能力はあるが身体が不自由になったとき、見守りや財産管理などを行ってもらうものです。
任意後見契約は認知症などで判断能力が乏しくなったとき、介護サービスの契約や財産管理などを行ってもらうものです。判断能力があるうちに契約します。
残る二つは死後の問題に対応します。死後事務委任契約は、葬儀や遺品整理などを行ってもらいます。
公正証書遺言は、確実に生前の意志に従って、財産の配分などをしてもらうためのものです。
契約は内容や報酬額を決め、依頼したい相手と契約します。弁護士や司法書士、行政書士などの専門家のほか、それ以外の人とも契約できます。任意後見契約と公正証書遺言は公証役場で作成します。
任意代理契約を結ぶ際は、将来認知症などで判断力が落ちることも考えて、任意後見契約もあわせて結びましょう。死後事務委任契約を結ぶ場合は、金銭の支払いなどがしやすいように公正証書遺言も作成し、契約を依頼する相手方に遺言執行者になってもらいましょう。
身内がいないAさんの場合は、まず死後のことを考えて、死後事務委任契約と公正証書遺言が必要になります。体が不自由になったときに備えて、任意代理契約や任意後見契約も考えておきます。
すでに体の調子が悪いBさんは、任意代理契約を考える必要があります。おいやめいに依頼するのであれば、将来の遺産配分を考えて、遺言書で配慮する必要もあるでしょう。
これらの契約では報酬の支払いが問題になります。前回の成年後見制度で説明したように、任意後見契約では、別に選任される任意後見監督人への報酬も必要です。
専門家と契約する場合は、費用によっては引き受けてもらえないケースもあります。死後の契約についても、遺産から一定の報酬が得られなければ引き受けてくれないかもしれません。
契約で一番重要なのは相手選びです。相性もありますから、今後が不安な人は早めに専門家に相談してみましょう。=全10回(相続・終活コンサルタント 明石久美)