潰瘍性大腸炎を治療する再生医療の流れ
大腸の粘膜に炎症が起こる難病「潰瘍(かいよう)性大腸炎」を治療するため、患者から採った幹細胞を培養し、再び患部に移植する臨床研究を、東京医科歯科大学のチームが今秋にも始める。治療法が確立できれば、重症の場合でも再発しないほどに回復する可能性があるという。
潰瘍性大腸炎は、難治性の潰瘍が大腸の粘膜にできる難病で、炎症が広がると腹痛や下痢、血便などが続く。国内の患者数は20万人以上とされ、増加傾向にある。薬などで炎症を抑えることが一般的だが、重症の場合は大腸を切除することもある。重症患者は全体の1割近くに上る。
臨床研究をするのは同大の渡辺守、岡本隆一両教授らのチーム。計画では、潰瘍性大腸炎の重症患者の大腸から、幹細胞を含んだ正常な粘膜を採取し、培養してオルガノイドという球状の構造をつくる。それを大量に培養し、内視鏡を使って傷ついた粘膜に移植する。細胞をオルガノイドにし、人の大腸に移植するのは世界初という。秋ごろに1人目の移植を予定。3年間で8人ほどで試み、安全性や効果などを調べる。
マウスでの実験では、移植したオルガノイドが大腸内に生着し、治療効果がみられた。渡辺教授は「腸内の傷を治すことで、再発しないまでに回復する可能性がある」と話す。将来的には健康な人の細胞でオルガノイドを作り、コストを下げることも検討している。
チームは、炎症性の腸の難病「クローン病」でも同様の臨床研究を検討している。原因不明で根本的な治療法がなく、国内の患者は約4万人とされる。(戸田政考)