日本代表に向けた応援の「ゲッツ!」をするダンディ坂野さん=諫山卓弥撮影
起こせジャイキリ サッカー日本代表
◆お笑い芸人・ダンディ坂野さん
黄色いスーツ姿に「ゲッツ」の決めポーズ。浮き沈みが激しいお笑い界にあって、息長く活躍するのがダンディ坂野さん(51)です。サッカーワールドカップ(W杯)の1次リーグで、日本が戦うH組は強豪ばかり。それでも勝ち抜くためには? 「一発屋」でも見事に生き残ったダンディさんに、ワンチャンスをものにする方法を聞いてみました。(聞き手・大波綾)
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【特集】起こせジャイキリ
だんでぃ・さかの 1967年、石川県生まれ。93年、お笑い芸人をめざして26歳で上京。マツモトキヨシのCM出演をきっかけに2003年、大ブレーク。ジョークを言った後、指を突き出し「ゲッツ」と口にするのが持ちネタ。現在、テレビCMなど9社と広告契約を結ぶ。
漫才のコンビを解消し、ダンディ坂野を名乗ってピン芸人になったのが1996年のときです。それから8年目、マツモトキヨシのCMでブレークすることができました。8年目でのブレークは、お笑い芸人としては早い方。実力ではなく、運がよかったと思っています。
《ダンディさんは、高校卒業後、会社勤めなどを経て石川県から上京。お笑い芸人養成所に入った。26歳、お笑いをめざすには遅いスタートだった》
アイドル歌手の田原俊彦さんに憧れて上京しましたが、年齢的にも、アイドルはあきらめました(笑)。僕がお笑いの世界に飛び込んだ頃は、(人気テレビ番組の)「ボキャブラ天国」(フジテレビ系)がはやっていた。どちらかというと洗練された、かっこいいフレーズを言うのがはやり。スーツを着て、古いスタイルでギャグを言う僕は、逆に目立ったのかもしれませんね。
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《99年に始まったNHKの深夜番組「爆笑オンエアバトル」。10組の芸人がネタを披露し、観客による審査で上位5組だけがオンエアされる。ダンディさんは第1回の放送から出場したが、オンエア率は約3割。「オンエアされない」記録を長らく保持していた》
若手がどんどんオンエアされていくのに、自分が出るのはオープニングとエンディングだけ。テレビに映れない時期は悔しかったですよ。でも、ネタで負けているのに、なぜか番組には呼ばれるんです。プロデューサーやディレクターに、不思議と面白がってもらって。それがマツモトキヨシのCMにもつながったと思います。
《CMによって、「ゲッツ」はすっかり流行に。マツモトキヨシの企業カラーに合わせ、現在のように黄色いスーツの衣装が定着する。2003年、ブームは頂点を迎え、その後は「一発屋芸人」と呼ばれるようになる》
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「一発屋」と呼ばれて、嫌な時期はたしかにありました。でも、いまは嫌とはまったく思わないです。「一発屋」はもはやお笑いの中の立派なカテゴリー。お笑いブームの中で、それを支えてきたのは、毎年出てくる「一発屋」たちですから。
《最近では「一発屋」のカテゴリーを越え、息の長い芸人として一目置かれるようになった。現在、企業の広告契約は9社を誇る。商品キャンペーンや各地のイベント、お祭りにもひっぱりだこ。全盛期ほどではないが、仕事が途切れない、忙しい日々を送る》
CMで「ゲッツ」がブレークしたあと、振り返れば、ターニングポイントがあったんですよ。一つは「内村プロデュース」(テレビ朝日系)という番組の中で、「お笑い下克上!」という企画がはまったとき。2週に1回呼ばれるようになりました。もう一つは「めちゃ×2イケてるッ!」(フジテレビ系)の「笑わず嫌い王決定戦」というコーナー。ここからは、テツandトモも、ブレークのきっかけをつかみましたが、僕も流れをつかんだ実感がありましたね。
少ないチャンスをものにできたというのは、自分でも運がよかったと感じます。攻守の流れがめまぐるしく変わるサッカーとも似ているかな。ピンチを防ぐのに一生懸命になりすぎるより、少ないチャンスに乗る、全力で乗りかかる。「ゲッツ」がまさにそう。いまも全力で「ゲッツ」に乗りきっています。
《「ゲッツの人」として定着した後は、たとえテレビに出ない日が続いても、苦にならなかったという》
僕、キャンペーンガールならぬ、キャンペーンおじさんとして、けっこう重宝されているんですよ。人が集まるところで「ゲッツ」とやれば、みんなが知っている。それだけで盛り上がる。とってもありがたいことです。
僕のお笑いでの立ち位置って、特殊なんです。体を張るわけでもない、ひな壇で盛り上げるわけでもない、情報番組で気の利いたコメントは言えないし、ましてやMCなんて難しい。でも、「ゲッツ」という一発上がった花火が大きかったからこそ、こうして息長く続けていられる。
日本代表にも、大きい花火をぶち上げてほしいです。だから最後に言わせてください。「チャンスをものにして、ぜひ勝利をゲッツ!」
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だんでぃ・さかの 1967年、石川県生まれ。93年、お笑い芸人をめざして26歳で上京。マツモトキヨシのCM出演をきっかけに2003年、大ブレーク。ジョークを言った後、指を突き出し「ゲッツ」と口にするのが持ちネタ。現在、テレビCMなど9社と広告契約を結ぶ。