後半、大迫(右)の勝ち越しゴールで沸く日本のベンチ。右から2人目は西野朗監督=19日、ロシア・サランスク、ロイター
サッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会で、日本が19日、コロンビアとの初戦(サランスク)を勝利で飾った。就任2カ月の西野朗監督(63)の積極策が、日本に南米勢相手で初めての白星をもたらした。
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1―1の後半、動いた。退場者を出して1人少ないコロンビアを相手に、引き分けでは終われない。
疲れの見えたMF香川真司に代えて、MF本田圭佑を送り込んだ。「拮抗(きっこう)した状況や、点を取りにいかなければいけない状況で起用すると、本人には伝えてあった」。3分後、本田のコーナーキックからFW大迫勇也の決勝ゴールが生まれた。
勝負師のルーツをたどると、消極性を批判された経験に行き当たる。指揮官として一躍脚光を浴びた「マイアミの奇跡」。1996年アトランタ五輪で、相手のブラジルの分析を重ねた結果、守備的な布陣で少ない好機にかけ、1―0で歴史的な勝利を挙げた。
だが、内容を「将来性が無い」と評価された。西野監督は言う。「そのときの反骨心が、攻撃的なサッカーへとつながった」
クラブを率い、積極的な選手交代と1点を取られても2点を奪いにいく攻撃的なスタイルをめざす。ガンバ大阪などで積み上げたJ1勝利数は史上最多の270。一時代を築いた。
この日のコロンビア戦。格上を相手にしてもひるまず、香川やMF柴崎岳ら技術力の高い選手を中盤に並べ、球を保持して試合の主導権を握るスタイルを貫いた。パスをつないで相手選手たちを走り回らせ、体力を奪っていった。
マイアミの奇跡に続く快挙。これも奇跡なのか? そう聞かれた西野監督は、うっすらと笑みを浮かべながら答えた。「ちっちゃい奇跡です。とてつもなく」。決して偶然ではなく、的確な指揮と、それを遂行した選手たちが生み出した必然の勝利。そんな思いが詰まった言葉だった。(清水寿之)