オーストリア・ウィーンにあるOPEC本部=2018年6月19日、ロイター
中東などの産油国でつくる石油輸出国機構(OPEC)は22日、ウィーンの本部で総会を開き、昨年からの協調減産を実質的に緩和することを決めた。現在は減産目標より生産を大幅に減らしているが、7月から段階的に増やして目標に近づける。米国の対イラン経済制裁などによる原油の供給減の懸念に対応する。
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OPEC議長国のアラブ首長国連邦(UAE)のマズルーイ・エネルギー相は記者会見で「減産目標を100%達成することで、市場に安定をもたらしたい」と述べた。今は減産目標より少ない生産量を、目標数値まで実質的に増やす方針を示した。各国への割り当ては「まだ決めていない」と話した。
専門家によると、目標まで引き上げた場合、OPEC加盟国の生産量は5月の水準より1日あたり70万バレル超、世界の石油供給量の0・7%分ほど増える。
決定を受け、22日の米ニューヨーク市場では国際指標の「米国産WTI原油」の先物価格が上昇。一時約3週間ぶりの1バレル=68ドル台をつけた。増産が小幅でペースも緩やかとの見方から価格が上がった。
OPECは2016年11月、原油生産量を、それまでより1日あたり計120万バレル少ない水準に抑える目標で合意。ロシアなどOPEC非加盟国も同調し、全体で計180万バレル少ない水準にすることを決めた。各国は米国のシェールオイル増産による原油価格低迷で採算が悪化していたが、減産で原油在庫は大幅に減り、価格は上向いた。
ところが今年5月、米国がイラン核合意から離脱し、イランへの経済制裁を再開すると発表。イランはOPEC3位の産出量で、1日あたり200万バレル以上を輸出するが、経済制裁により大幅に減るおそれが出た。南米ベネズエラも経済危機で原油生産が激減。世界的な供給減の懸念が強まり、WTI原油先物価格は5月初め、約3年5カ月ぶりに終値で1バレル=70ドルを超えた。
OPEC最大の産油国サウジアラビアやロシアは、価格上昇で原油需要が減ることを懸念し、減産緩和を検討。OPECと非加盟国で5月の水準より1日あたり100万バレルを増やす案を総会に提案していた。
経済制裁で生産が減るイランは、原油価格下落と輸出減で経済的な打撃を受けることを警戒し、減産の緩和に反対姿勢だった。ただOPEC全体の生産量は、減産目標を大幅に下回っている。一定の減産緩和をしても、市況に大きな影響は出ないと判断した模様だ。
減産が緩和されれば、原油価格は一時的に下がりそうだが、増産余力のある産油国は限られ、イラン情勢も不透明だ。「年末にかけて原油価格は上がる傾向」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之主席エコノミスト)との見方がある。(ウィーン=寺西和男)