複合の初代女王に輝いた野口啓代。ボルダリング1位を決め、ガッツポーズを見せた
スポーツクライミング複合の日本一を決めるジャパンカップは24日、盛岡市の岩手県営運動公園などで決勝があり、男子は楢崎智亜(ともあ)(TEAM au)、女子は野口啓代(あきよ)(同)が優勝した。予選1位だった地元出身の16歳、女子の伊藤ふたば(同)は2位だった。複合は2020年東京五輪のために作られた新しい競技形式で、スピード、ボルダリング、リードの三つを全てこなし、順位を掛け算して、ポイントが少ない選手が上位となる。日本一決定戦の開催は今回が初めて。
決勝では、楢崎智がスピードで6秒87の日本新記録を樹立。前日の予選で自身がマークした従来の記録を0秒06更新した。
野口啓代、スピードと冷静さ
日本の初代「複合女王」の座は、29歳の野口啓代がさらった。
「勝因は良い流れをつかんだこと」と本人が振り返る通り、1種目のスピードで波に乗った。自己ベストの11秒61は、この日の出場選手6人中4番手の持ちタイム。ただ、周囲が硬くなってミスを連発する中、ベテランらしく冷静に12秒06でまとめて3位。「これが私には大きかった」
鬼門の種目で上位に食らいつけたことで、気持ちが軽くなったという。続くボルダリングは、4課題を唯一全完登して1位。W杯年間優勝4度を誇る得意種目で優勝をたぐり寄せると、最後のリードは「気持ちで押し切った。優勝したいって」。2位に食い込み、頂点をつかんだ。
複合は東京五輪で実施される競技形式。幸先のいい日本一に「まだ実感はない」と言いながらも笑顔が弾けた。
だが、課題が浮かび上がったことも確かだ。「やっぱりスピード。9秒台に近いタイムを出さないと、自信を持って世界とは戦えないと思う」。自己ベストが11秒台では、日本一にはなれても五輪の表彰台は遠い。「8秒60をクリアしてほしい」とは、日本代表の安井博志コーチだ。大舞台に向けて、強化が続く。
楢崎智亜、スピードの日本記録
楢崎智亜が2日連続でスピードの日本記録を塗り替えた。大会前までの自己ベストは7秒16。だが、23日の予選で従来の記録を0秒01更新する6秒93をマークすると、決勝では6秒87をたたき出した。下半身の使い方を意識した練習を積んできたという。五輪に向けてスピードが弱点とされる日本勢だが、成長ぶりに「楢崎は順調」と代表チームの安井博志コーチ。楢崎も「自信がついた。記録はまだまだ伸びる」と今後への手応えを口にした。