米事務機器大手ゼロックスは25日、同社を買収する計画だった富士フイルムホールディングスに対し、2021年に期限切れとなる両社の提携契約を更新しない考えを伝えた。富士フイルムとの合弁会社、富士ゼロックスが担当しているアジア太平洋地域では、米ゼロックスが直接、自社製品の販売に乗り出すとした。
富士フイルムは18日、米ゼロックスが大株主の圧力に負けて買収合意を破棄したのは契約違反だとして、10億ドル(約1100億円)超の損害賠償を求める訴訟を米裁判所に起こした。これに対し米ゼロックスは25日、富士フイルムの古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO)に宛てたジョン・ビセンティンCEO名の書簡を公表した。
書簡は、買収が実現しなかったのは富士ゼロックス内部の会計問題のせいだと指摘。富士フイルム側に数々の契約違反や裏切りがあったなどとして、提携関係の打ち切りを通告した。
米ゼロックスは主に欧米市場を担当し、アジア太平洋で営業する富士ゼロックスとすみ分けてきたが、「より効率的な供給網によって米ゼロックスがアジアで直接販売すれば巨大な成長機会がある」とした。
書簡について富士フイルムは「内容は想定の範囲内。会計問題は解決済みだ」と反論。アジア市場については「現時点で営業網を持っていない米ゼロックスが一からチャンネルを構築し、販売することは現実的には非常に難しい」と指摘した。
両社が1月に買収合意を発表したあと、「物言う株主」のカール・アイカーン氏ら米ゼロックスの大株主2人が猛反発。米ゼロックスは5月に買収合意を破棄し、大株主側がビセンティン氏ら新たな経営陣を送り込んでいた。(ニューヨーク=江渕崇)