クボタが12月に発売する、国内初の運転支援機能付きコンバイン=2018年6月15日午後、千葉県柏市、伊藤弘毅撮影
トラクターやコンバインなど、農業機械の自動運転技術が進化している。担い手不足や高齢化への対応で、普及が進むとメーカーがみているためだ。
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15日、千葉県柏市の郊外に広がる小麦畑で、刈り取りや脱穀のためのコンバインが動いていた。運転席の作業員は両手をあげ、とくに操作していないが、直進だけでなく、畑に沿って方向転換もしている。
クボタが12月に発売する自動運転機能付きコンバインの実演会だ。
この日は雨のため刈り取りはしなかったが、刈り取りや脱穀も、最初の6メートルほどを手動運転で進めたあとは、自動でできるのだという。タンクがもみ殻でいっぱいになると、コースを離脱して捨て場に行き、再び戻ってくる。作業時間を1割短縮できる。実演会を行った畑を所有する柏染谷農場の染谷茂代表(68)は、「運転に集中せずに済めば疲れ方が全然違うし、運転中に他の作業もできる。使ってみたい」と話した。
希望小売価格は税抜き1570万円からで、通常のものより1~2割高い。自動運転には別売りの移動式GPS基地局(120万円)も必要だ。
クボタはこれまで、田畑を耕すトラクターや田植え機でも運転支援技術を備えたものを発売済みだ。
こうした自動運転機能付きの農機は、ライバルのヤンマーや井関農機も開発に力を入れている。
人手不足に朗報
農家の減少で農機の市場が縮む中では、メーカーには自動運転は成長が見込める数少ない分野にみえる。
農家は担い手が不足し、高齢化も進んでいる。田畑はでこぼこしているため、運転手が重いハンドルを操作しないとまっすぐ走ることも難しい。作業の効率化も求められている。多少高額でも大規模農家では導入が進むかもしれないと考え、自動運転機能の開発に各社がしのぎを削る。
無人で農作業を行う機械の開発も進めている。実現の目標は、井関農機は2020年、クボタは22年といった具合だ。実用化には、作物と障害物の判別や暴走防止などのために、センサーや制御の技術を一層高める必要がある。
矢野経済研究所は、農機への自動運転技術の採用などの「スマート農業」市場が、23年度には16年度と比べて約3・2倍の333億円になると予測している。(伊藤弘毅)