大型コンバインがトウモロコシを刈り取る=ブエノスアイレス州、江渕崇撮影 左派ポピュリズム(大衆迎合主義)からの脱却をめざす南米アルゼンチンのマクリ中道右派政権が、試練の時を迎えた。経済開放を進めたところ、米金利上昇の波をもろにかぶり、自国通貨の急落と高インフレに見舞われている。(ブエノスアイレス=江渕崇、岡田玄) 首都ブエノスアイレスの繁華街フロリダ通りを歩くと、「両替しないか」と声がかかった。米ドルをほしがるヤミの両替商だ。「この数カ月で両替商が増えた。値下がりするペソを持ち続ける人はいないよ」 5月初めまで1ドル=約20ペソだったペソ相場は、2週間で1ドル=約25ペソに急落。最近は28ペソ近くで動く。米国でインフレと利上げの観測が強まり、アルゼンチンなど新興国に回っていた資金が流出した。通貨防衛のためアルゼンチン中銀は利上げを繰り返し、政策金利は年40%に達した。 押し寄せた米金利上昇の波 サッカーチーム「ボカ・ジュニアーズ」の経営立て直しなどを手がけたマクリ氏が大統領に就いたのは2015年。保護主義や補助金の大盤振る舞いなど、ポピュリズム色が強かった前フェルナンデス中道左派政権から政策を大転換した。補助金や輸出入規制などを取り払い、世界市場に打って出る戦略だ。 ところが、そこに米金利上昇という大波が押し寄せた。前政権の「負の遺産」である高インフレも、ペソ急落で退治が遠のいた。 タクシー運転手のパブロ・ガウディニさん(44)は妻、娘と暮らす。日曜以外は10時間働き、月給2万ペソ(約8万円)ほど。インフレに給料増が追いつかず、医療保険に入っているのは妻と娘だけ。「貧困層に落ちないよう柵にしがみついている。それが現実だ」 IMFは改革路線を評価 マクリ氏の改革路線は、国際通貨基金(IMF)や内外の経済専門家から好意的に評価されてきた。投資環境が上向いたとしてトヨタ自動車などが追加投資を打ち出した。 主力産業の農業は活況を呈している。首都から車で2時間ほどの大農場を訪ねると、巨大コンバインがトウモロコシを滝のようにはき出していた。リカルド・モリさん(45)は昨年、数千万円でこの機械を導入した。「今の政権になって投資する気になった」 前政権は農産物の輸出に上限を設け、20~35%の輸出税を課した。税収を確保しつつ、国内の食料価格を抑える政策だった。しかし意欲ある農家にとっては「動物園で狩りをしろと言われたようなもの」(農業団体幹部)だ。 マクリ政権はこの縛りを解いた。農産業省のマリサ・ビルチェル副大臣は「輸出増で、雇用もインフラも充実できる。私たちも市場を開き、自由貿易を進めていく」と話す。 16年春には財政破綻(はたん)以来15年ぶりにドル建ての国債を出し、国際金融市場に復帰した。17年秋の議会選でも政権側が勝利。今年は主要20カ国・地域(G20)首脳会議の議長国にもなり、軌道に乗ったように見えた。しかし、改革の副作用も積み上がっている。 電気代10倍、支持率は低迷 首都近郊で機械部品工場を営むオナハ・アルベルトさん(65)は「あと1年持つかどうか」。輸入規制が緩み、3分の1の価格の中国製品が流入。補助金カットで電気代は10倍近くに跳ね上がった。同業者は工場をたたんだり、従業員を半分以下に減らしたりした。 前政権は輸出入の割り当てが不透明で、汚職も多かった。それでも「国内を守るために一定の貿易バランスを保とうとしてくれた」と懐かしむ。 公務員を減らし、膨らんだ年金支給にメスを入れたせいもあり、労組などは不満を募らせる。一時は7割あった政権支持率は3割台に低下。そこに今回の経済混乱が襲った。 アルゼンチンの戦後史はポピュリズムと経済危機の連続だ。国内産業重視・労働者保護を目指したポピュリスト、ペロン元大統領の流れと、市場重視でIMFと協調する流れが対立。IMFの意向に沿う政策を採った後の89年と2001年に経済危機があった。 つらい記憶は今も残る。 首都近くに住む主婦アドリアナ・マルトンさん(48)は5月、マクリ政権がIMFに支援を求めたニュースに、01年の危機を思い出した。当時、ペソの価値が1日で4分の1になり、給料はその日のうちに使い切った。「もう金利40%では驚かない」。貯金は全てドル。「大統領も自国通貨を信じていないと思う」。2歳の子どもの服はどれも古着。お金のやりくりばかり考えている。 国立トレスデフェブレロ大のラウル・オチョア教授(国際経済学)は「この国のポピュリズムは根強く、常にそこに戻る可能性がある。だが、再び世界から孤立し、バラマキに走るのは国にとって自殺行為だ」。大統領選は来年に控えている。 「ポピュリズムの病、退治する」 アルゼンチンのガブリエラ・ミケティ副大統領が朝日新聞との会見に応じ、経済政策の狙いを語った。 ◇ アルゼンチンは過去何十年間も、ポピュリズムの囚人だった。左派も右派も選挙目当ての政策に一生懸命で、長期的な国造りやインフラ投資がおろそかにされた。国を閉じて世界から孤立し、経済がズタズタにされた。 私たちの第一の目標は、ポピュリズムの病を退治して「普通の国」になり、経済を離陸させることだ。 例えば異常に安かった電気料金の値上げ。以前は必要なコストの8%しか料金で賄えなかった。政府も補助しきれず、エネルギー危機に陥っていた。 値上げは確かに不人気な政策だったが、おかげで設備投資にお金が回り、頻繁だった停電も減った。これで外国企業の投資も呼び込める。私たちは日本など先進国と協調し、戦略的な関係を築いていきたい。 ◇ ミケティ副大統領 1965年生まれ。マクリ氏がブエノスアイレス市長だったときの副市長。(聞き手=江渕崇) |
痛み伴う経済開放か、国内産業重視か アルゼンチン試練
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