三喜由華さん(手前右)ら3年生3人の最後の夏はもうすぐだ=2018年6月7日午後4時13分、秋田県能代市緑町
2013年、共学の能代商と女子校の能代北が統合して開校した能代松陽。能代商には正式な応援団がなく、能代松陽の応援団は、能代北の女子応援団の系譜を引き継ぐ。その象徴が、紫のはかまだ。
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能代北の元応援団長の柴田由美子さん(62)は、はかまを身に着けると「気持ちも体も引き締まった」と話す。後に団員も着けるようになるが、団長を務めた1973年当時は、団長だけの特権だった。
白い着物姿で草履を履き、たすきと鉢巻きを着用。バスケットボールやバレーボールなどの試合や壮行会などで応援歌や校歌を歌った。テニスのように静かに応援するスポーツではエールの交換もせず、良いプレーに拍手を送るだけということもあった。
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女子校なので野球部は無かった。当然、野球用の応援も。学校統合の影響は、はかまにも及んだ。
能代商野球部は、夏の甲子園に3回出場した名門。応援では、ディスコミュージックが元になっている「アフリカン・シンフォニー」のようなノリの良い定番曲が頻繁に演奏されていた。はかまを着けた女子の振り付けは合わせづらかった。
「人数も多いし、チアリーダーのほうが映えるのでは」。統合を機にチアリーダーに変更することが学校から提案された。
二十数人の団員たちは戸惑った。特に3年生は、はかまへのこだわりが強かった。最終的には「新しい形でスタートしてもよいのでは」と、チアリーダーの衣装を新たに買いそろえた。
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それから5年。野球応援のスタイルは試行錯誤が続き、毎年柔軟に形を変えている。伝統のはかまを着けたり、チアリーダーの衣装を着たり。「はかまがかっこいい」と入部を決める女子生徒もいる。
今年の団長は、男子としては2人目の梅田大夢(ひろむ)さん(3年)。中学生のときからバンカラ風の応援団に憧れていた。東京六大学の応援団を参考にして、振り付けを考えている。
副団長の三喜(みき)由華さん(3年)は、野球の応援がしたくて応援団に入った。今年は最後の夏。能代松陽としては、まだ甲子園出場はない。「歴代の先輩の思いを受け継ぎ、憧れの甲子園ではかまを着けて応援したい」と練習に熱を入れている。(野城千穂)