縫製工場で働く中国人実習生たち=愛知県内、小玉重隆撮影
多くの新品の服が売れ残り、廃棄されている。背景には、流行を追いかけ、より安く大量に供給する衣料市場の現状がある。その影響は、国内の製造現場で働く人の暮らしも脅かしている。
新品の服、売れずに廃棄「年10億点」 人気ブランドも
「プチプラおめかし服1847円♪」「2点で650円。即買い推奨」
インターネットのブログに掲載されているカーディガンやワンピースはおしゃれで、とてもその価格には見えない。流行を押さえ、作りもしっかりしている。
プチプラは「プチ(小さい)プライス(値段)」の略。紹介するブログは、ファッション雑誌の購読数ほどの読者数を誇るものもあるほど人気だ。
2000年代以降、安くて流行を押さえた「ファストファッション」が定着し、消費者はお金をかけずにおしゃれを楽しめるようになった。ネット通販も広がり、経済産業省が6月に公表した資料によると、国内の衣料品の供給量はバブル期の約20億点から20年で約40億点に倍増した。一方、家計の衣料品の購入単価は約6割に減った。
競争が激しくなり、メーカーは費用を抑えようと人件費の安いバングラデシュなどに発注するようになった。業界の事情に詳しい小島ファッションマーケティングの小島健輔代表は「これらの国の工場は、技術がなくても働けるように作業を細分化し、規模を大きくしている。メーカーは大量に発注する必要があり、売れる数はそこまで増えていないのに、供給量が大幅に増えた」と分析する。
「他の業者も似たような商品を出せば大量に売れ残るが、半年から数カ月前に発注しているため、途中で減らすのは難しい。売れ残れば、製造コストの安さは帳消しになってしまう」
そのしわ寄せは働く人たちに向かい、低賃金と長時間労働につながる。「同じ単純作業の繰り返しで、技術を身につけて給与を上げる仕組みになっていない」と、小島さんは指摘する。
「憧れの日本にやっと来たのに……」
国内を代表するアパレル産地の愛知・岐阜両県にまたがる名岐地区では、生産の海外化のあおりで縫製業者が激減した。いま、残る工場の主な働き手となっているのは中国や東南アジア出身の技能実習生だ。
「憧れの日本にやっと来たのに…