ふるさと納税の事務を「代行」している自治体の例
西日本の豪雨で被災した自治体にあてた「ふるさと納税」による寄付に伴う事務作業を、別の自治体が引き受ける支援が進んでいる。被災自治体の事務負担を軽くし、被災者への対応や復旧に力を振り向けてもらうのがねらい。3年前に豪雨の被害に遭った経験から茨城県境町が始め、20自治体に広がっている。
2015年9月、豪雨に襲われた茨城県境町には、ふるさと納税の代行サイトを通し、約2200万円の寄付が寄せられた。しかし、受け取るには寄付した人の税控除に必要な証明書の発行などが必要で、作業負担は小さくなかった。町によると「他の職員は復旧作業に当たっているのに、中にこもって事務作業をしていていいのか」と漏らす担当職員もいたという。
翌16年4月、熊本地震が発生。境町の橋本正裕町長がふるさと納税に伴う事務負担を何とかできないか代行サイト「ふるさとチョイス」の運営会社トラストバンクと相談し、受け手以外の自治体が事務を代行する「代理寄付」の仕組みが生まれた。
今回の西日本豪雨でも7日から、広島県と岡山県倉敷市の事務を担う。「被災地が普通の生活を取り戻すには相当の時間がかかる。災害廃棄物の処理や避難所の運営もあり、職員が復旧作業に専念できるよう支援したい」と橋本町長は話す。
この取り組みを知り、被災自治体とつながりのあるほかの自治体も同様の支援を始めた。17日までに20自治体が被災12自治体の代理寄付を受け付け、3億6千万円を超える額が集まった。
大分県佐伯市は、建物の浸水被害があった高知県宿毛市の代理寄付を担う。担当者は「宿毛市とは長年、フェリー航路でつながっていて、お互いの祭りにも参加し合う関係。少しでも力になれたら」と説明する。
三重県亀山市は岡山県高梁市を支援。江戸時代に藩主が入れ替わる「国替え」があった縁で、12年から災害時相互応援協定を結んでおり、現地に給水車も派遣している。担当者は「被災現場での活動に専念してほしい」と話す。
境町や熊本県などの支援を受ける広島県税務課の高橋大輔課長は「通常の寄付の受け付けだけでも負担が大きく、こうした形の支援は大変ありがたい」と話している。(下地達也)