アナウンスをする石巻商の木村有優さん=仙台市民
(18日、高校野球宮城大会 仙台工13―3宮城水産・石巻北)
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宮城水産・石巻北のコールド負けが迫った五回表。
「2番、キャッチャー、荒川君」
放送席でかつての仲間の名前を読んだのは、石巻商マネジャーの木村有優さん(3年)。宮城水産・石巻北とは春まで連合チームを組んでいた。練習試合で、何度みんなの名前を読んだだろう。「これが最後かも」と思うと、一人一人との思い出が駆け巡った。
ソフトボール部員だった中学生の頃、甲子園でチームを支える女子マネジャーに憧れた。石巻商では先輩たちに迎えられてマネジャーに。でもすぐに同期は和泉祐希(同)だけになった。やめたいと漏らす和泉に前を向かせようと、二人でランニングした。
2年生の秋、単独では出場できなくなり、連合チームを組んだ。石巻北には同学年のマネジャー伊藤栞さんがいた。木村さんはベンチに入れず、アナウンスに回ることもあった。それでも一緒にがんばってきた和泉君を見て、「私はアナウンスで甲子園をめざす」と決め、甲子園の生のアナウンスを何度も聞き返した。
この夏、石巻商は単独で出場できることになった。「仲間に恩返しがしたい」と公欠をもらい、元チームメートの初戦のアナウンスに入った。一回、荒川勝哉(同)はチーム初安打。思い出すのはふざけている姿ばかり。「やるときはやるじゃん」。なんだか悔しかったけれど、「私たちが抜けてからも努力してたんだろうな」とも思った。
連合チームは敗れた。試合中は平気だったのに、石巻北の伊藤さんの顔を見た途端、涙があふれた。彼女と同じチームでなければ、アナウンスをすることもなかったかもしれない。感謝を込めて「今日までお疲れさま」と抱き締めた。
19日には石巻商の初戦がある。「みんなの分も絶対に勝ちます」。今度はベンチからチームを支える。=仙台市民(窪小谷菜月)