(20日、プロ野球、広島10―9巨人)
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16日ぶりに歓声が戻ったマツダスタジアムが祈りに包まれた。西日本豪雨災害で犠牲になった人に向けて広島、巨人の選手が黙禱(もくとう)を捧げた。両チームのファンは、鳴り物を使わずに声援を送った。
2週間前、広島を大雨が襲った。家や車が流され、道路も寸断。鉄道も止まり、店からは水や食料が消えた。
広島は9日から阪神との3連戦を予定していた。チケットは完売。マツダスタジアムに被害はなかったが試合を行うべきか、やめるべきか。松田元オーナーは悩んだ。中止にするとしても1日か2日か。
日を追うごとに明らかになっていく被害に「今はまだみんなが下を向いている。できんと思った」。3連戦全ての中止を決定。球団発足時から市民球団として歩んできたからこその判断。そして言葉を続けた。「原爆のときも復興の支えになってきた。立ちあがる時には支えになる」
広島市と呉市を結ぶ国道31号が復旧するなど、少しずつだが前へと進みつつある。この日、試合開始5時間前から広島のユニホームに身を包んで歩くファンの姿があった。試合は延長十回、下水流の逆転サヨナラ2ランで劇的な勝利を飾った。3万1千人を超すファンの喜ぶ顔に、私の頭にある言葉が浮かんだ。
被爆体験を元にした漫画「はだしのゲン」の作者・中沢啓治さん(故人)が「広島カープ誕生物語」で原爆孤児の主人公に語らせた言葉だ。《広島カープはわしらの希望の星じゃ》。その思いは今もきっと広島の人のなかに流れている。(藤田絢子)