大相撲名古屋場所で、初めて賜杯(しはい)を抱いた関脇御嶽海。初日の前日だった7月7日、七夕飾りにまつわる彼のエピソードを紹介したい。つるされた関取衆の願い事のなかで、御嶽海の短冊は一風変わっていた。
相撲特集:どすこいタイムズ
「イケメンになる」
25歳は、短冊にそうしたためていた。ウケ狙いではないというが、真意は?
彫りの深い顔立ちは、イケメンの部類に入るのではないだろうか、と記者は思っている。ところが、御嶽海の「イケメン」の定義は外見ではなかった。優勝が近づいてきた13日目(20日)の朝、自ら説明した。
「地位を上げること、勝つことが格好いい」。彼にとってのイケメンは、仮面ライダーやウルトラマンのようなヒーローだ。「勝つからみんなが見る。ウルトラマンが敵にやられるところ、見たくないもん」
身近なイケメンは、同じく母がフィリピン出身の高安。ずっと目標にしている先輩だ。
「筋肉、体がでかい。大関になると変わるんだね」。土俵上での強さに加え、強さがにじみ出る言動、雰囲気にも憧れている様子。まねしているわけではないだろうが、最近、取組後の取材対応が、高安に似てきた。
付け人からドリンクを受け取りゴクリ。目を閉じ、感情は表さず、小さな声でぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。昨年までの御嶽海はもっとはきはきしていたし、今でも、テレビカメラの回らない朝稽古後の取材では、底抜けに明るい。イケメンをめざす今、ファンからどう見られるかにも気をつかい始めたように映る。
今場所の好成績で、その高安と同じ地位を狙える位置まで来た。七夕の願い事を成就させるなら、このチャンスを逃す手はない。(鈴木健輔)