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広がる経済格差、物言えぬ閉塞感 カンボジア総選挙

作者:佚名  来源:本站原创   更新:2018-7-26 15:48:09  点击:  切换到繁體中文

 

カンボジアで長きにわたった内戦が終わり、国連の下で復興に向けた総選挙が1993年に実施されて25年。経済は徐々に発展を遂げ、首都プノンペンの表情は見違えるようになった。だが、農村部との格差は広がるばかり。フン・セン政権の「1強政治」が続くなか、物言えぬ閉塞(へいそく)感も社会に広がりつつある。(バタンバン=鈴木暁子、プノンペン=貝瀬秋彦)


カンボジア西部バタンバン州カムリエン。タイへと続く国境のゲートに大勢が列をなす。近隣の村に住むヘニさん(24)は、弟(18)とタイの建設現場に初めて出稼ぎに行く。


両親は川魚を売って暮らしてきた。6人きょうだいのだれも、学校で勉強したことがなく、「定職につけない」と言う。タイでは月に9千バーツ(約3万円)ほど稼げると聞いたという。


カンボジアはここ数年、年7%前後の経済成長を続けており、プノンペンとその周辺では商業ビルや高層アパートの建設が相次ぐ。外資規制の緩さや人件費の安さを背景に、中国などから外資が流入。流れに乗ってもうけた人たちは高級車を乗り回す。


だが、発展の恩恵は地方にはなかなか及ばない。農民らがある程度の現金収入を得るには、「プノンペンの建設現場で働くか、タイなどに出稼ぎに出るしかないのが実情」(NGO関係者)だ。バタンバン州と周辺州の村々には子どもとお年寄りの姿が目立つ。


与党のポスターは目立つが


もう一つ目につくのが、33年間首相の座にあるフン・セン氏率いる与党・人民党の看板や貼り紙だ。道路沿いの質素な家の戸口には「人民党は発展と平和を実現する」と書かれたポスターがあった。


あふれる看板や貼り紙は必ずしも人民党支持を意味していないと住民らが教えてくれた。人民党を支持する村長らからの嫌がらせをおそれ、「断れない」のが実情だとある人は明かした。別の住民は周囲に聞こえないようにささやいた。「前回の選挙では、救国党に投票したんだ」


2013年の総選挙と昨年の地方選で、最大野党・救国党は4割を超える票を得た。地方には人民党の組織が張り巡らされているが、メディアなどを通じて救国党の主張を知り、政権交代による暮らしぶりの改善を望んだとみられる。だが、救国党は昨年11月、最高裁の命令で解党された。


よくならない暮らし


「政府は私たちのことなんて考えていない」。ペン・トウチさん(55)は簡素な家で1歳の孫のハンモックを片手で揺らし、もう一方の手で孫のスレイニちゃん(6)にご飯を食べさせながら、首を横に振った。


次男(30)と長女(25)はタイのパイナップル農園で働く。帰るのは年に1度で、1歳の孫は親の顔を覚えていない。家には4年ほど前に電気が通ったが、水道はない。公立小学校へは徒歩で1時間。近所の子どもは通っていないが、スレイニちゃんは仕送りのおかげで、月に450バーツ(約1500円)かかる私立学校に通えるようになった。


ペン・トウチさんも、救国党の躍進に心を躍らせた一人だった。「でも、結局は勝てなかった。私たち農民の暮らしは、だれに票を入れても変わらないんだ」


「前はどう書こうかと考えた。でも今は、どうすれば記事を掲載できるかばかりを考えている」。英字紙プノンペン・ポストの関係者は、暗い表情で話した。以前に比べて、編集段階で政権に批判的な内容が削られるようになったという。


同紙は5月、マレーシアの投資家に買収された。買収劇とフン・セン氏とのつながりを指摘する記事を載せたとして編集長が解雇され、一部記者も退社した。その後、与党に近い人物が経営者になったという。


昨年9月には、英字紙カンボジア・デイリーが多額の納税を求められた末に、廃刊に追い込まれた。ラジオ局の閉鎖も相次いだ。昨年11月には米政府が支援してきたラジオ・フリー・アジアのカンボジア人元記者2人が、無許可カラオケ店を経営したなどとして拘束され、閉鎖後も情報を発信していたことが刑法の違法な情報収集にあたるとして起訴された。


いずれも、救国党の躍進に危機感を抱いた政権側が、総選挙を前に批判的なメディアの「口封じ」をしたと受け止められている。


圧力を受けるメディア、NGO


圧力を受けているのは、人権問題などを追及するNGOも同じだ。南西部コッコン州では昨年9月、環境NGO「マザーネイチャー」のスタッフ2人が逮捕された。シンガポールなどに砂を輸出する企業の不正取引を指摘し、砂を船に積み込む様子を公海上で撮影したことが、扇動とプライバシーの侵害にあたるなどとされた。逮捕の数日後、政府はマザーネイチャーの事実上の閉鎖を発表した。


活動を制限された人たちにとって、フェイスブックが救いの一つだ。


「首相が『ストロングマン』なのは国民をいじめるときだけ」。スペイン出身でマザーネイチャー創設者のアレハンドロ・ゴンザレス・デビッドソンさんは今月、フン・セン氏を批判する動画を公開。再生回数は6万2千回、3千件以上シェアされた。「問題意識をもつ個人としての活動はだれにも止められない」とデビッドソンさんは話す。


だが、活動現場の苦境は続く。土地問題などにかかわるNGOでは2年ほど前から、住民らと打ち合わせをしているだけで、警察が来るようになった。「選挙後は緩やかになることを願って、いまは息を潜めている」と関係者は話す。


ネットもチェックされる?


ただ、メディアやNGOへの弾圧は、市民の心理に影響を与えている。中堅の公務員は「フェイスブックは表向き自由のようだが、我々のアカウントは当局にチェックされているはずだ」と疑う。


プノンペンに住む20代の女性は最近、友人らと政治の話をしなくなった。「みんなだまってしまうから、何を考えているのか分からない。そこが私には怖い」



 

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