防衛省は30日、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」2基の配備費用が総額で約4664億円になる見通しを明らかにした。米航空機大手ロッキード・マーチン社製の最新鋭レーダーを搭載するが、金額は当初想定から1基あたり約1・7倍に。2023年度予定だった運用開始も、米側の事情で大幅に遅れる方向という。
米朝対話の流れにある中、配備候補地の秋田市と山口県萩市の住民は、北朝鮮の弾道ミサイル対応を理由に導入を急ぐ政府への反発を強めている。地元の懸念や予算膨張で、導入の是非が国会で改めて議論になりそうだ。
防衛省が採用するのは、「LMSSR」。探知範囲は1千キロ超とされ、海上自衛隊イージス艦の搭載レーダーの2倍以上にあたる。小野寺五典防衛相は同日、記者団に「わが国の弾道ミサイル防衛能力は飛躍的に向上する」と強調した。
当初はレーダーも含め1基800億円と試算。ところが1基あたり約1340億円に膨れ上がった。防衛省は総額をこれまで明かしてこなかったが、導入後30年間の維持・運用費(約1954億円)などを加えて約4664億円となった。本体部分を日米両政府間で取引する有償軍事援助(FMS)で調達するため、金額は売り主の米側の「言い値」になりやすく、さらに増える可能性がある。
また、23年度としてきた運用開始時期は、早くても25年度になる見通しとなった。ロッキード社が1基目の製造から配備まで、来年にも予定するFMS契約締結から約6年かかると説明しているためだ。(藤原慎一)