(17日、高校野球 近江9-4常葉大菊川)
甲子園の全試合をライブ中継 バーチャル高校野球
18日締め切り! 夏の甲子園、歴代最高の試合は? 投票ベストゲーム
常葉大菊川の村松祥太は「ノーサイン野球」が売りのチームで、唯一、高橋監督のサインを受ける。それがひそかな自慢だ。
この日の出番は甲子園に着く直前の午前6時ごろ。バスの前方にいた監督が振り向いてニヤリと笑った。「いけ!」のサインだ。
ボン・ジョビの楽曲「イッツマイライフ」に乗せ、服を脱ぎ、自慢の筋肉を見せつける。「ヤーッ」の叫び声でストップ。お笑い芸人なかやまきんに君の一発芸で爆笑を誘った。「みんなはこれでリラックスできる。ここまで来たのは僕のおかげかな」
最初からこの役を買って出たわけではない。6月、遠征メンバーの25人に入れず、事実上、最後の夏のベンチ入りが消えた。ふてくされ、グラウンド整備をサボると監督にばれた。「僕は何をすればいいのかわからない」。監督に思いを打ち明けると、言われた。「盛り上げ役になってくれよ」
元々筋トレが趣味で、特に大胸筋には自信がある。監督はきんに君のコントの映像を見せてくれて「バスでやってみろ」。静岡大会の初戦の前に披露すると予想以上にウケた。「もうやめられない」。飽きられないようにと始めた変装も定番に。甲子園の1回戦は金のパンツを準備。2回戦は宇宙人のマスク。この日は金髪のカツラをかぶり、ヘリウムガスで声を変えた。
アルプスでもひときわ大きな声を出した。九回に3点を返すと感極まったが、涙はグッとこらえた。「最後まで自分らしくいないと」。鍛え上げた太い腕で、汗を拭ってから笑った。(岩佐友)