注射用抗がん剤を無駄なく利用するため、一つの瓶に入った抗がん剤を2回にわけて使用することを認める指針を厚生労働省がまとめた。高額な抗がん剤が相次ぎ登場する中、廃棄されていた分を安全に活用することで、医療費削減が期待される。残薬活用に関する指針は初めて。
液状の抗がん剤はガラス瓶にゴム栓をしたバイアルという容器に入っている。使用量は患者の体重や治療状況などによって変わり、瓶単位だと薬液が余ることがある。廃棄される抗がん剤は年間700億円分を超すという試算もあり、自民党行革推進本部が昨夏、対応を求めていた。
指針は、分割使用できる薬を、開封後も成分が分解しないなどの安定性がある抗がん剤に限る。3回以上では、安全性に影響が出たり、注射針を刺す栓から漏れる抗がん剤の量が増えたりする可能性があるため、2回までとした。どの薬剤を対象とするかなどの運用は、各施設で事前に決めておくよう求めている。
メーカー側は、細菌汚染の恐れがあるとして残薬を使わないよう呼びかけているが、一つの瓶から複数の患者に使うことは禁止されていなかった。厚労省が昨秋から今春に実施した調査では、291施設中27%にあたる80施設が抗がん剤を分割使用していると答えていた。(黒田壮吉)