「僕が阪神の監督になってからの3年間は、『本当に畜生』という思いばかりでしたね」。阪神の金本知憲(ともあき)監督(50)はそんな表現で、かわいがってきた後輩をねぎらった。
新井の引退表明を受け、5日、マツダスタジアムでの試合前に取材に応じた。新井からはこの日朝、電話で正式な報告があった。
「本当に弟みたいな存在」だった。7年遅れて広島に入団してきた新井を鍛えあげ、慕われた。自らの後を追うように阪神に移籍してきた2008年4月には、自身が2千安打を達成した同じ試合で新井は1千本目の安打を放った。「変な巡り合わせを感じました」と懐かしんだ。
阪神の監督に就任したのが2016年。古巣に戻っていた新井はその年、25年ぶりのリーグ優勝を果たし、MVPに。翌年は甲子園での直接対決で2連覇を決められ、今季は3連覇が秒読み段階だ。
「カープに戻っていい場面で打つようになって、敵将となってからは悔しい思いばかりさせられたけど、心のなかではよく頑張っているなと思っていた」。晩年の勝負強い打撃を認めつつ、続けた。「常にベンチで若い選手がやりやすい雰囲気をつくり、この年になっても全力疾走を続けていた。残した数字以上に、そういう彼の姿勢がいまのカープを強くした。彼の明るさ、キャラクターがいまのカープの強さの根底にあるんじゃないかと僕は思う」
親しさのゆえだろう。からかったり、いじったりばかりで、めったにほめることのなかった「弟」へ。これ以上ない賛辞を贈った。(竹田竜世)