日本の敗戦から73年になる8月、安倍政権が成立させた安全保障関連法は違憲だとして、東海地方の市民が名古屋地裁に国を訴えた。他国への攻撃に自衛隊が応戦する「集団的自衛権」が、不戦を誓った日本の道を誤らせるのではないか――。原告は裁判に将来への不安を投影している。(黄澈) 元裁判官 「法の支配が揺らいでいる」 「名前を連ねることには抵抗もあった」。今月2日の提訴後の記者会見。原告共同代表の下沢悦夫さん(77)は張り詰めた表情でマイクを握った。 2006年に岐阜家裁で定年を迎えるまで裁判官だったことが、原告になることをためらわせた。だが、振り払った。「法の支配が揺らいでいる。後輩の裁判官に最後の勇気を振り絞ってほしい」 太平洋戦争が始まった1941年に神奈川県で生まれた。親族2人が戦死し、自身も空襲を経験した。60年安保闘争の年に東大法学部に進学。憲法の平和主義に引かれ、66年に任官後は護憲を掲げる青年法律家協会(青法協)に加入した。 だが、裁判所では自衛隊と憲法9条の関係が問われた訴訟で憲法判断を避ける傾向が続いてきた。例外的に違憲判決を出した73年の「長沼ナイキ訴訟」札幌地裁判決は上級審で覆された。青法協の裁判官は、自民党や保守派からの「偏向」攻撃にさらされ、協会の裁判官組織は80年代に消滅した。 憲法76条は裁判官が外部の圧力を受けずに独立して裁判をするとうたい、81条は裁判所が違憲の法を審査すると定める。 下沢さんは「私たちは役割を果たしてきただろうか。裁判所が憲法判断を積み重ねてきていたら、『集団的自衛権は合憲』という勝手な解釈を一内閣に許すことはなかったはずだ」。 今回の訴訟は司法の場に身を置いた者の責務だと考えている。「裁判所は日本の司法を守るためにも、訴えに正面から向き合ってほしい」 僧侶 父は悔い、平和念じ続けた 愛知県碧南市の真宗大谷派「報恩寺」住職、石川勇吉さん(69)は、僧侶だった父勇導(ゆうどう)さんから「戦時中、大政翼賛会に関わり、地域の青年に戦意高揚の講話もした」と聞いて育った。 出征して戦死した若者もいた。敗戦後、勇導さんは戦争協力を悔い、戦後50年の95年まで戦没者追悼の月例法要を欠かさなかった。翌96年に他界した。 「平和を念じ続けた父を敬い、私も平和運動に関わるようになった」と石川さんは言う。「愛知宗教者九条の会」の事務局などを務めてきた。 浄土真宗の経典「仏説無量寿経」に「兵戈(ひょうが)無用」という言葉がある。「兵隊も武器も必要ない」との意味だ。「お経の実践が僧侶の務め。憲法9条はその具体的な道筋だったが、安倍政権が空文化してしまった」 安保関連法の成立に、宗教者の生き方と父への思いを踏みにじられたと感じている。「裁判は私の宗教的実践、つまり菩薩行(ぼさつぎょう)です」 元自衛官 「殺し、殺される」存在に 「自衛隊が憲法から離れていく」。02年まで10年間、自衛官だった水上学さん(44)=名古屋市熱田区=はそう話す。 92年に航空自衛隊に入った。前年には海上自衛隊の掃海部隊が湾岸戦争後のペルシャ湾に派遣された。自衛隊の活動が海外に広がり始めたが、「本当に自分たちがすべき任務なのか」と疑問を持った。入隊時に署名する「服務の宣誓」が、自衛隊の使命を「我が国の平和と独立を守る」とうたっているからだ。 宣誓は隊員に「憲法の遵守(じゅんしゅ)」も求めている。だが、安保法制には多くの憲法学者から違憲の指摘があった。「法の成立で、自衛官は武器を持って海外で『殺し、殺される』存在になってしまった。元自衛官として耐えられない」 ◇ 〈安保法制違憲訴訟〉安全保障関連法は憲法違反だとして、ノーベル物理学賞受賞者の益川敏英・京都大名誉教授ら143人が、国に1人あたり10万円の賠償を求めて名古屋地裁に提訴した。同様の訴訟は全国で25件。原告は、他国への攻撃に自衛隊が応戦する集団的自衛権の行使は憲法で認められると政府が勝手に解釈し、15年に安保関連法を成立させたと主張。同法が容認した自衛隊活動は、戦力と交戦権を否認した憲法9条違反で、平和的生存権などの憲法上の権利を侵害されたと訴えている。 |
「役割果たしたか」問う元裁判官ら 安保法制違憲訴訟
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