「天皇と日本人」の著者 ケネス・ルオフ ポートランド州立大学教授=東京都渋谷区、飯塚悟撮影
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日本の天皇は、他の国の王や女王とどう違うのか。「国民統合の象徴」とは、いったい何か。そもそも、民主主義と君主制は矛盾しないのか。これからの世界とこの国で、天皇制が存続する意味はどこにあるのか。退位と改元を機に、来日した、米国を拠点に活動する現代天皇制研究の第一人者に聞いた。
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ケネス・ルオフさん(ポートランド州立大学教授)
――平成の天皇の歩みを、どのように評価しますか。
「戦後の日本国憲法の柱である、平和と福祉のために尽くした明仁天皇と美智子皇后だったと評価できるでしょう。それも、ただ『平和が大事』と繰り返すだけではありませんでした。日本の国民に対して、日本人が戦争で経験させられた大変なことだけでなく、日本が過去、特に近隣の諸国の人びとに行ったひどいことについてもしっかり思い出し、記憶し続けることが大事なのだという誠実なメッセージを伝えました」
「天皇制がかつて排外主義的な象徴に使われ、今も使おうとする人々がいるのは事実ですが、平成の天皇と皇后は国際協調主義に基づいた行動を続けたと思います。戦争の傷痕をいやそうという行動を含め、その基盤には、戦後憲法の価値を重視するという考えがあったことも間違いないでしょう」
「災害の被災者に接する姿は、あらゆる国民が記憶するでしょう。皇太子時代から、障害者など社会の弱者に配慮し、離島などを訪れ、地理的なことも含めて周辺にいる人々に手をさしのべ続けたことも特徴でした」
まるで歴史の授業のように
――特に印象に残っている出来事は、ありますか。
「一番興味深く感じたのは、明仁天皇の2001年の誕生日にあたっての記者会見です。『桓武天皇の生母が百済の武寧王(ぶねいおう)の子孫であると続日本紀(しょくにほんぎ)に記されていることに韓国とのゆかりを感じています』と述べました。『純粋な日本民族』や『万世一系』を重視する人々は、衝撃を受けたでしょう」
「しかし、それだけにとどまら…