陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の山口配備をめぐり、岩屋毅防衛相は3日、村岡嗣政知事らに謝罪した。秋田配備に関する調査報告書でデータのずさんな取り扱いが相次いだこともあり、山口でも批判が噴出。地元の理解を得る見通しは立っておらず、配備に向けた難しさは増している。
岩屋防衛相は3日午前、山口県庁を訪れた。「秋田県への説明データに大きなミスがあり、山口県の皆様にも大変ご心配をかけた」。村岡知事のほか、配備を計画する陸上自衛隊むつみ演習場がある萩市の藤道健二市長、演習場に隣接する阿武町の花田憲彦町長らに謝罪した。
「町をあげて反対している状況は全く変わっていない。到底、地元の理解を得たとは言えない」。花田町長は強い口調で訴えた。岩屋氏は手元の用紙にメモを取りながらうなずき、「もう一度、しっかり調査し、ご理解いただけるように努力をしていきたい」と答えるしかなかった。
秋田市の陸自新屋演習場を適地とした調査報告書は、山の高さを実際より高く記載し、電波調査の数値も転記ミス。津波対策の必要性を書いていない、など信頼性が揺らぐ事態になった。むつみ演習場の報告書でも、レーダー電波の照射方向にある高台の標高が国土地理院のデータと異なっていたことが発覚。報告書は、いずれもデジタル地球儀「グーグルアース」に基づいて作られていた。
花田町長の反対姿勢に対し、村岡知事や藤道市長は賛否を明らかにしていない。その村岡氏も「不安や懸念が多くある。精緻(せいち)な数字、正確なデータで丁寧な説明を行っていただきたい」と注文。藤道氏は「信頼を揺るがしかねない」と不満を述べた。藤道氏は、電磁波の人体への影響などを市独自に検証する方針で、米軍がイージス・アショアを実戦配備しているルーマニアを訪れ、調査することも検討している。
秋田配備では、佐竹敬久知事が6月27日の記者会見で「白紙に戻してもう一回やったほうが早道」と主張したばかり。山口でも厳しい現実を突きつけられた防衛省の幹部は「何をしても役所の信頼がない。期限を決めずに丁寧に進めるしかない」と漏らす。(林国広、金子和史)
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