埼玉県熊谷市で2015年、民家3軒で計6人が殺害された事件で、妻と娘2人を殺害された遺族の男性(45)が県を相手取り、約6400万円の国家賠償請求訴訟をさいたま地裁に起こすことがわかった。1軒目の殺害の発覚後、県警が必要な情報提供をしなかったことが、3軒目の男性宅での殺害につながったとして、警察権を適切に行使しなかった違法性を問う。
事件は15年9月14~16日、熊谷市内で発生。さいたま地裁で今年3月、強盗殺人などの罪で死刑を言い渡され控訴しているペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(33)の一審判決などによると、15年9月14日に1軒目の夫婦が殺害され、その後別の家で女性が、16日に男性の妻の加藤美和子さん(当時41)、長女美咲さん(同10)、次女の春花さん(同7)が殺害された。
男性側は訴状で、ナカダ・ルデナ被告が1軒目の事件前日に別の家への住居侵入の疑いで任意で事情を聴かれていた際、熊谷署から逃走したことや、14日夜までに夫婦の殺害が発覚し、15日未明には県警がナカダ・ルデナ被告を夫婦殺害事件の参考人として手配していたことを問題視。
この時点で被告が逃走中であることや、夫婦の殺害について、防災無線やパトカーによるアナウンスを活用して住民に告知しなかったこと、戸締まりなどの注意を促さなかったことなどが、警察権の不行使にあたると主張している。
男性は代理人弁護士を通じて「警察が周知を徹底していれば、事件は防げたはず。落ち度があったことを認めて謝罪してほしい」とコメントした。
県警は「訴状を見ていないので、コメントを差し控える」としている。