(13日、中日6―2阪神)
思わずほえた。右手をグッと握り締める。五回2死二、三塁のピンチ。大山を空振り三振に仕留めると、中日の松坂は珍しくガッツポーズを繰り出した。
「5回しか投げられず申し訳ない。次はもう少し長く投げられるように頑張りたい」。公式戦では西武時代の2006年以来、実に12年ぶりの甲子園で5回を被安打5、1失点。今季6勝目を手に入れた。
右打者の外角、左打者の内角でボールゾーンからシュート回転でストライクゾーンに入ってくる球が有効だった。二回のピンチでは右の梅野、四回は左の伊藤隼をこの球で見逃し三振に仕留めた。
高校時代に1998年夏の甲子園に出場し、プロでしのぎを削った杉内(巨人)や村田(BC栃木)、後藤(DeNA)といった同学年が次々と引退を発表。
「まだ辞めないで欲しいな」。仲間たちがユニホームを脱ぐことに、複雑な胸中を漏らした。そして、「ぼくはもうちょっとがんばるよ、という思いを込めた」。自身も右肩の故障などで苦しい日々を過ごした。まだ戦える。世代のリーダーとしてふがいない投球は出来ない。98年11月生まれの才木を相手に今季3度目の勝利で貫禄を見せた。
この日は38歳の誕生日だった。二回の第1打席では中日だけではなく、阪神ファンからも大きな拍手が送られた。多くの野球ファンのため、まだマウンドに立ち続ける。(鷹見正之)