20日の自民党総裁選の投開票を前に、安倍晋三首相と石破茂・元幹事長が19日、東京都内で最後の街頭演説に立った。「盛り上がりに欠ける」といった指摘が多い論戦を聴衆はどう受け止めたのか。 特集「安倍×石破 二人が見る日本―自民党総裁選2018」 「安倍批判」隠し 安倍氏は午後5時半前にJR秋葉原駅前に到着。経済政策「アベノミクス」の成果を強調しつつ、「自衛隊に誇りをもって任務を全うしてもらうのが政治家の責任だ」と憲法改正の必要性も訴えた。 会場では拍手がわき起こり、日の丸の旗が振られる一方、「安倍やめろ!」のコールも。「安倍政権NO」などのプラカードが掲げられると、のぼり旗を持った一団がプラカードを覆った。知り合いの国会議員秘書から安倍氏の応援に来るよう頼まれたという男性(52)は「安倍さんの政策で生活が良くなった実感はないけど、『やる気があれば誰でも高等教育を受けられるようにしたい』という話に共感した」と話した。 安倍氏の車の周囲には数十人の国会議員が並んだ。首相を見られる高架通路の中央にコーンが並び、入ろうとする人に党関係者らが「紹介ですか」などと確認。これに対し、「おかしい」と詰め寄る人がいた。 埼玉県東松山市の司会業伊藤美咲さん(54)は、昨年の都議選終盤、安倍氏が「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と秋葉原で言った際、現場で抗議の声を上げていた。今回、「街頭演説なのに支持者しか入れない所があるなんて」と当時との違いに驚いていた。 埼玉県の自営業男性(41)は「結局、いろんな国民に意見を届けようという気持ちがない。こんなやり方をするなら街角でやる意味がない」と憤った。 居合わせた千葉県の男子大学生(19)は、様々な声にかき消され、演説内容は最後まで聞こえなかったという。「安倍さんにも原因があるのかもしれないけど、批判する方も過激では」と語った。(阿部峻介、村田悟、矢崎慶一) 「株取引で恩恵」 「渋谷にいるとわからないかもしれないが、鳥取は本当に恐ろしい勢いで人が減っている」。19日午後6時過ぎ、石破氏が東京・JR渋谷駅ハチ公口前で、地元の鳥取を例に地方の状況を語り始めた。傍らのスクランブル交差点では、信号が青になるたびに、演説を横目に大勢の若者らが行き交う。 たまたま通りかかって演説を聴いた福岡県大牟田市の高校3年生の男子(17)は、「この人混みを見ていると、少子化ってわからないんじゃないんですか」とつぶやいた。父親が株取引でアベノミクスの恩恵を受けているという。「景気が保たれないと、大学の学費を出してもらえない。石破さんは間違っていないかもしれないけど、自分の人生が大事だから僕は安倍さん支持」 世田谷区の自民党員で、医療団体職員の男性(38)は異なる感想を抱いた。「格差社会の中、国民一人ひとりの幸せを訴えたのが印象深かった。安倍さんが有利だが、一強は良くない」と話した。(長谷文) 9条改正に反対 東京・日比谷では19日夜、憲法9条改正や米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する集会があった。この日は安全保障関連法成立から丸3年。参加者らは「戦争できる法律はいらない」「力を合わせて政治を変えよう」と声をあげた。神奈川県鎌倉市の角田淑恵さん(74)は「安倍政権はお友達ばかりに目を向け、市民の声が届いていない」。別の男性(69)は「石破さんになっても代わり映えはしないだろう」と語った。(高野遼) |
最後の街頭演説、聴衆はどう受け止めた 自民総裁選
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