プロ野球・西武ライオンズが30日、10年ぶりとなるリーグ優勝を果たした。2010年、11年の西武担当記者が、今季チームの投手陣を引っ張った菊池雄星の印象的なシーンを振り返った。 西武が10年ぶりパ・リーグV 強打で開幕から首位堅持 特集:埼玉西武ライオンズ ◇ 「雄星」を信じる人たちがいた。 今から8年前。ルーキーだった西武の菊池雄星は、どん底にいた。左肩痛でろくに投げることもできず、コーチから暴力を受けたことが表沙汰になるなど、不本意にも野球以外の部分で注目されることが多かった。花巻東高(岩手)で甲子園をわかせ、鳴り物入りで入団したが、「雄星は終わった」という声すら耳にするほどだった。 6年目までは2桁勝利に届かず。その間に、高校の三つ後輩、大谷翔平が球界をわかせていた。 だが、花巻東高の佐々木洋監督や流石裕之部長からよく聞かされたものだ。「投手として本当にすごいのは、雄星だ」と。 大谷はもちろんすごい。レーザービームのような右腕の直球に対し、雄星のそれは、「漫画のようにボールが大きくなって打者に迫ってくる感覚」で、恐怖心すら与えるのだという。 ただ、流石部長の言葉を借りれば、「どんなスポーツでも日本代表になれるくらいの運動能力がある」という大谷に対し、雄星は「ピッチャー以外はうまくない」。実際、雄星が縄跳びをしているのを見たことがあるが、へたくそだった。不器用ゆえ、成長に時間がかかる部分があっただけのことなのだ。 雄星は1年目のオフ、高校時代の仲間から「お前らしくやればいい」と励まされたことで、周囲の雑音を気にすることはなくなった。ゆっくりだが着実に成長を続け、今季は絶対的エースとして自身初の優勝を手にした。誰より、雄星自身が己の力を信じた証しだ。元担当としてこんなにうれしいことはない。 (2010、11年シーズン西武担当・山口史朗) |
どん底の雄星、それでも信じた 絶対的エースに成長
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