韓国の最高裁が、元徴用工の賠償請求を認める判決を出した。日韓両国が「解決済み」としてきた問題を、司法がひっくり返した形だ。同様の訴訟への影響は必至で、新たな提訴もありうる。日本政府は即座に抗議したが、韓国政府も世論やこれまでの立場との折り合いをどうつけるか問われることになりそうだ。
元徴用工への賠償「協定の対象外」 韓国最高裁が初判断
賠償命令「パンドラの箱開けた」 元徴用工訴訟、識者は
「(日本の植民地時代)100万人が国外に強制動員された。今日の判決は、そのような被害に新しい出発点を与えるものだ」
判決後、支援団体は原告4人のうち唯一の生存者である李春植さん(94)とソウル市内で記者会見を開き、今後、植民地支配下の様々な被害について集団訴訟を起こす考えを示した。
弁護団は、新日鉄住金が賠償に応じない場合、財産を没収する強制執行手続きの検討に入るとし、一例として同社が保有する韓国鉄鋼最大手のポスコの株式を挙げた。専門家によると、申し立てはすぐにできるが、株式の場合、国内財産か海外財産か見方は分かれるという。
元徴用工の補償問題をめぐっては2005年、当時の盧武鉉(ノムヒョン)政権が、1965年に日韓が結んだ請求権協定の交渉文書を検討した結果として、日本から受け取った無償3億ドルの経済協力資金には、「強制動員の被害補償の問題解決という性格の資金が包括的に勘案されている」との見解を示した。元徴用工の補償は韓国政府が取り組むべき課題とした。
05年の見解を踏まえる韓国政府と流れを変えた大法院
こうした韓国政府の「整理」に異議を唱える形で、請求権協定を適用しない対象を広げたのは大法院だった。
韓国の裁判所の一審・二審は、原告の一部に対して日本の裁判所が出した「日韓請求権協定で個人請求権は消滅した」とする判決は、韓国でも効力を持つと指摘。原告の主張を退けた。これは韓国政府の見解にも沿った判断だった。
ところが大法院は2012年、…