6月にあったサッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会で、対コロンビア戦の試合直前にインターネット上で宣言したのをきっかけに、東京駅から山口まで自転車で旅することになった大学生がいる。1日の走行距離約100キロ。今月9日、ついにゴールへたどりついた。
日本勝ったら自転車で山口行ってやる W杯の宣言実行へ
東京都内の大学に通う「るい(14世)」さん(22)。今月9日午後5時過ぎ、サッカーJ2のレノファ山口が本拠地とする、山口市の維新みらいふスタジアムに姿を現した。
出迎えたサポーターや近所の人たちから「よくやったね」「お疲れさま」などと歓声が上がった。
「疲れはあるけど、思ったより楽にいけた」。涼しげな表情を見せた「るい(14世)」さんだったが、本来はこんなはずではなかった。
「日本代表勝ったら自転車で東京から山口行ってやるよ」
6月19日のコロンビア戦前、ツイッターに軽い気持ちでこう投稿した。
世界屈指の強豪相手に、予想は見事に裏切られた。試合開始早々に日本が先制し、2―1で日本の劇的勝利。あっという間に、「るい(14世)」さんのツイートは拡散した。「やるしかない」。腹をくくって試合の翌朝、旅の実行を宣言した。
山口市生まれで、レノファ山口の熱烈なファン。東京から山口まで、青春18きっぷで旅をしたこともあった。9月13日正午、1人で東京駅を出発した。
道中、思いがけず多くの人たちから支援を受けた。食事を提供してもらったり、同じように自転車で旅をしている人と一緒に各地を巡ったりして励まされた。
「反響は大きかった。走り始めたからには、やめるのは嫌だと思うようになった」
旅の途中の9月下旬には、自転車旅を装い、大阪府警富田林署から逃走した樋田淳也容疑者(30)が山口県周南市の道の駅で現行犯逮捕された。「自分は怪しまれることはなかったけど、『あの逃走犯と一緒に走ったんですか』とネット上でからかわれた」
一時、自転車旅を中断して東京に戻らざるを得なかった時もあったが、11日間かけてゴールと決めたスタジアムまでたどり着いた。
「むちゃだと思ったけど、走るうちに楽しくなり、またしようかなと思えるほどになった」
ただ、スタジアムで出迎えた人から「次は『レノファがJ1に昇格したら』で、旅を宣言して」と声を掛けられた際には、笑って首を振った。「もうあんなツイートはしません」(藤野隆晃)