「画壇の仙人」と呼ばれた画家熊谷守一(1880~1977)の絵画「椿」を美術商から預かって無断で質に入れたとして、京都府警は15日、京都市北区紫竹東桃ノ本町の美術販売会社長、金(きん)竜男容疑者(54)を業務上横領の疑いで逮捕し、発表した。「質には入れたが、(美術商に)代金は払った」と否認しているという。
下鴨署によると、逮捕容疑は2013年9月、美術商の男性(71)=京都市左京区=から販売を依頼されて絵画を預かりながら、翌日に900万円で質に入れたというもの。2600万円以上で販売し、それを超えた額が金容疑者に入る約束だった。質入れ後に「絵は売れた」と連絡したが、支払いにも返却にも応じなかったという。
署は、金容疑者が3カ月後に質から買い戻し、15年1月に別の美術商に買い戻し額を大きく上回る額で売ったことを確認。この販売についても、詐欺容疑か窃盗容疑にあたるとみて捜査を続ける。絵画はその後も売買が繰り返され、個人が所有している。
熊谷守一は岐阜県生まれ。東京美術学校(現東京芸術大)で学び、油彩画のほか、日本画や墨絵も手がけた。晩年は東京都内の自宅にこもり、身近な虫や花を単純な線と色彩で描いて「画壇の仙人」と呼ばれた。文化勲章を辞退したことでも知られる。