南太平洋の島国・パプアニューギニア(PNG)でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が17日に始まる。式典に花を添えるPNG軍楽隊は、自衛隊が「先生役」となって育ててきた。海洋進出を強める中国をにらみ、インド太平洋地域での存在感を増そうとする自衛隊の活動の一環だ。
「楽団として演奏できている。見違えるほど上達しました」。陸上自衛隊中央音楽隊の蓑毛勝熊(みのもかつくま)1等陸尉(51)は現地で指導にあたりながら、国際舞台でのお披露目を心待ちにする。
3年前、PNGから依頼を受けて支援を始めたときには隊の形すらなかった。現地の公立学校では音楽を教えておらず、ドレミを知らない新人もいた。中核となる隊員を日本に招く一方、1~2カ月単位で訪問を重ねた。楽器の組み立て方から始め、楽譜の読み方、音の出し方と教えた。荻智博1等陸曹(44)は「大変でしたが、この時期に信頼関係が生まれました」と振り返る。
昨年3月からは航空自衛隊の元航空中央音楽隊長の水科克夫さん(62)が国際協力機構(JICA)の専門家派遣事業で現地に住み込み、軍楽隊のレパートリーは行進曲やポップスなど20曲以上に増えた。
自衛隊が力を入れるこうした交流は「能力構築支援」と呼ばれる。「アジア太平洋地域の安定化」を目的に、2010年の防衛大綱に初めて記され、12年に始まった。人命救助や災害対応、国連平和維持活動(PKO)のノウハウなどの支援を意味し、「親善目的の共同訓練に比べ、途上国のニーズが高く、自衛隊の得意分野を生かせる」(防衛省幹部)という。対象はフィリピン、ベトナム、モンゴルなど15カ国に広がる。
一方、中国も近年、こうした分…