JR名古屋駅東側にある柳橋中央市場の「中央水産ビル」(名古屋市中村区)について、所有者が売却を検討していることが関係者への取材で分かった。駅周辺は再開発ビルの建設計画が相次いでおり、売却の場合は新たな再開発につながる可能性もある。
名古屋駅、変わりゆく街
ビルの敷地と建物は、市場の業者でつくる「名古屋中央市場水産物協同組合」(浅岡哲也理事長)が所有している。組合によると、ビルは1965年に建設され、鉄骨・鉄筋コンクリート造り7階建て、延べ床面積約1万3千平方メートル。市場の中核施設で、鮮魚の卸売業者など最多の約70店舗が入居している。
ビル老朽化に伴い、組合は数年前から耐震化や建て替え、移転を検討。だが、費用が高額な上、移転先が見つからないことなどから結論がまとまらずにきた。
組合は今月中旬に臨時総会を開き、今後の方向性を組合員に伝えた。参加した複数の組合員によると、選択肢の一つにビルの売却と組合解散があり、「売却の場合にはビル以外に組合が所有する近隣の駐車場や冷蔵ビルも対象となる」「(売却額は)計約200億円になる」などと説明された。売却先として、名古屋駅前の高層ビル「ミッドランドスクエア」などを運営する東和不動産(名古屋市)の名前も出ているという。
組合は12月初旬に臨時総会を開き、売却と組合解散について採決する方針だ。売却した場合、代金は主に組合員の補償などにあてられるという。ただ、組合員の一人は「売却する場合でも、市場の業者が使う冷蔵施設や駐車場がなくなる。市場の運営に影響を与えるのではないか」と話す。
組合の浅岡理事長は朝日新聞の取材に、売却が選択肢の一つであることや、組合が不動産会社と接触している状況を認めた上で、「年内には結論を出そうと思っている」と話した。
東和不動産はビルの買収について「現時点でそういう動きはない」(広報担当)とコメントしている。(佐藤英彬、友田雄大)