旧京都帝国大(現京都大)の人類学者が1929年、沖縄県今帰仁村(なきじんそん)の墓から26人の遺骨を研究用に持ち去ったとして、琉球王家の子孫ら5人が4日、京大に遺骨返還と原告1人あたり10万円の慰謝料を求めて京都地裁に提訴した。
原告は、1406~69年に沖縄を治めた王家「第一尚氏(しょうし)」子孫の亀谷(かめや)正子さん(74)と玉城(たまき)毅さん(68)=ともに沖縄県うるま市=と、沖縄出身の3人。
訴状によると、京都帝大の金関丈夫(かなせきたけお)助教授(1897~1983)は、第一尚氏がまつられた百按司(ももじゃな)墓から、子孫や地元住民らの許可を得ずに遺骨を持ち去った。保管している京大は、原告が求める遺骨返還に応じなかったとしている。
原告は、霊魂がやどる遺骨を奪われ、祖先をまつれず、憲法が保障する信仰の自由を侵害されたと主張。遺骨返還を求める先住民族の権利を認めた国連宣言などにもとづき、遺骨の所有権があると訴えている。一方、京大広報課は「訴状を見ていないのでコメントは差し控える」としている。
提訴後の会見で、玉城さんは「民族の尊厳を回復するために遺骨を返してほしい。骨がない墓を拝んでいたのかと思うと、むなしく許せない」、亀谷さんは「先祖の遺骨を何が何でも取り返したい」と述べた。(川村貴大)