青空を背景に、真っ白い外壁が映える。図面には2階建ての家が描かれている。ベランダからは、琵琶湖が望めるはずだ。生後まもなく施設に預けられた男性が初めて持つ、自分と家族の空間。胸に去来するのは、新しい暮らしへの希望と、喪失感だ。
大阪府高槻市の山本幸生(こうせい)さん(30)は、家族が寝静まった休日の夜、図面をみながら冷えたビールを飲むのが楽しみだ。大津市内の高台にある土地は、2年越しで見つけた。来年4月の完成まで、あと少し。
心残りが一つある。
初めてのマイホームを誰よりも見せたかった人が、6月にこの世を去った。
名を村田弘道(ひろみち)とい…