ジャケットを着こなし、渋い表情を浮かべる写真の男性は誰かおわかりだろうか。6日から順次公開される「こはく」に準主役で出演する大橋彰(44)。実は、裸一貫の芸で知られる芸人アキラ100%だ。
主人公・亮太(井浦新)の兄である章一を演じた。「これほど長いセリフがある役だとは思わなかったので、台本を読んで『大変なことになったな』と思いました。撮影が始まってからも、作品を壊してしまうのではないかとずっと不安で……」と振り返る。
映画は、長崎県を舞台に、亮太と章一の2人が、幼い頃に姿を消した父を捜す日々をあわいタッチの映像で描いてゆく。見る人に「家族とは何か」と考えさせるヒューマンドラマであり、涙を誘う感動物語だ。
お盆を自在に操り、股間を隠しながら裸芸を披露する姿しか知らない人は「なぜ?」と思うかもしれないが、大橋は元々、俳優志望だったという。高校では演劇部に所属し、大学以降は小劇場で活動。20代には、俳優養成所にも通っていたほどの筋金入りだ。
しかし、俳優としては鳴かず飛ばず。「公演をやっても客席は友人ばかりでした」。それでも舞台に立つ夢は諦めきれず、チャプリンら喜劇役者に憧れていたこともあり、30歳で笑いの道にも活動を広げた。アルバイトを続けながらの活動だったが、2017年にひとり芸の日本一を争う「R―1ぐらんぷり」で優勝すると、40歳を過ぎてお茶の間の人気者となった。
横尾初喜監督は、芸人でなく、俳優として舞台に出演していた大橋にほれ込み、前作「ゆらり」(17年)の一シーンで起用。その実力を買って、今作では主要な役どころでオファーした。「哀愁と笑いを同時ににじみ出せる役者だと感じていた」と横尾監督が言うように、出演2作目でも堂々と人間味あふれる演技を見せている。
大橋は「裸の芸で売れるまで『人生、どうなるんだろう』と思っていた。よくやめずに続けたと思います。大きなスクリーンに自分が映るのが、今でも信じられません」(小峰健二)