1985年に熊本県松橋(まつばせ)町(現・宇城市)で男性が殺害された「松橋事件」のやり直しの裁判(再審)で、殺人罪などで服役した宮田浩喜さん(85)について、熊本地検が新たな有罪主張をしないことがわかった。宮田さんは事件から30年余りを経て、殺人罪の無罪が確定する見通し。熊本地裁で20日に開かれた弁護団との協議で、地検側が明らかにした。
松橋事件の再審決まった父、十数年ぶりに再会した次男は
弁護団によると、検察は再審公判で殺人罪の求刑をしない方針も明らかにした。しかし、自白調書を証拠採用するかどうかで検察と裁判所の意見が分かれ、1月31日に改めて協議することになった。
松橋事件では、当時59歳の男性が殺害され、将棋仲間だった宮田さんが取り調べの末に自白し、殺人罪などで起訴された。熊本地裁での公判中に否認に転じたが、懲役13年の判決が言い渡され、90年に刑が確定した。
97年になって、弁護側の請求で熊本地検が保管していた証拠が開示され、宮田さんが「凶器に巻き付けて使った後で燃やした」と自白していたシャツの袖が見つかった。弁護団はこれらの新証拠をもとに2012年、再審を請求。熊本地裁は16年、「自白の信用性を認められなくなった」として再審開始を決定した。福岡高裁も翌年、地裁の決定を支持した。検察側は特別抗告したが今年10月、最高裁が棄却し、再審開始が決まった。
宮田さんは脳梗塞(こうそく)を繰り返し、自由に体を動かしたり話したりできない状態となっており、弁護団は熊本地裁に意見書を出すなどして、速やかに無罪判決が出るよう求めていた。
松橋事件の経過
《1985年1月》
熊本県松橋町(現・宇城市)で、男性(当時59)の遺体が見つかる。県警は宮田浩喜さんを殺人容疑で逮捕
《86年12月》
熊本地裁が宮田さんに懲役13年の判決
《90年1月》
最高裁が上告を棄却
《97年》
弁護側が証拠品の閲覧を申請し、熊本地検がシャツの布などを開示
《99年》
宮田さんが刑期を終え出所
《2012年3月》
宮田さんの成年後見人の弁護士が再審請求
《16年6月》
熊本地裁が再審開始を決定
《7月》
熊本地検が即時抗告
《17年11月》
福岡高裁が即時抗告を棄却
《12月》
福岡高検が特別抗告
《18年10月》
最高裁が特別抗告を棄却。再審開始が確定