マイク・マサオカ(正岡)氏を知っていますか――。日系2世の米国人が、1957年6月の岸信介首相の初訪米にあたり、アイゼンハワー米大統領から直接、有力情報を得たとして、岸氏から称賛されていた。19日公開の外交文書で明らかになった。
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【特集】外交文書公開
正岡氏は、戦前戦後を通じて日系人の地位向上のために尽くした。戦後は米連邦政府や議会に働きかけるロビイストとして活動。収容所生活を送った日系人の補償に関する法成立に貢献した。日米をつなぐパイプ役を務め、91年に75歳で亡くなった。
今回、正岡氏の名前が記載されていたのは、57年6月に朝海浩一郎・駐米大使が出した「総理訪米に関する件」と題する文書。首相訪米直前の同月14日、貿易関連の組織の代表者とアイゼンハワー氏との会談後、組織メンバーの正岡氏がアイゼンハワー氏と二人だけで約15分間話した。正岡氏が聞いたアイゼンハワー氏の岸政権への関心事は2点で、長期政権の可能性と、次期選挙で社会党政権の樹立を抑えることへの期待だったという。
日本政府は当時、米政府高官らと接触を図り、手探りでアイゼンハワー氏の意向をつかもうとしていた頃。岸氏発の朝海氏宛て返電では、正岡氏が得た情報を「甚だ興味深くかつ有益」とほめたたえた。さらに、正岡氏に「日本側の一般的見解」を説明するよう指示。伝達の有無や内容は公開文書では明らかではないが、日本が優位となるよう、ロビー活動をしてもらいたいとの狙いがあったとみられる。
井口治夫・関西学院大教授(日米関係史)は「正岡氏が日米間のパイプ役だったことはよく知られているが、彼は黒衣として目立たぬよう活動していた。具体的な行動がうかがえる面白い文書だ」と指摘する。(国吉美香)