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2030年。誰もいないリビングで、ロボットがスリッパの向きをそろえ、積み木をおもちゃ箱に入れていく。ロボットの頭脳には人工知能(AI)――。
「パソコンやスマホと同じように、AI搭載のロボットを1人1台持つ日がきます」。AIベンチャー、プリファード・ネットワークス(PFN)社長の西川徹さん(36)が思い描くのは、人とAIが共生する未来だ。
昨年10月、千葉・幕張メッセであった先端技術の見本市シーテックジャパン。居間を再現したPFNのブースで感嘆の声があがった。「靴下をこっちに」と技術者が指さすと、身長約130センチの自走式ロボットが靴下を腕ではさみ、ゴミ箱に運ぶ。
「お片付けロボット」を開発したプリファード・ネットワークスの西川徹社長=2018年12月7日午前11時42分、東京都千代田区、飯塚晋一撮影
人の動きを識別し、指示通りに動く。そんなAI搭載ロボットは「超高齢社会の課題を解決してくれる」と西川さんはいう。介護の現場で物を運び、食事を手伝う。建設や農業で人を助ける。そうした世界を5~10年先に実現しなければ「人手不足の現場は破綻(はたん)してしまう」という。
なにしろ厚労省によれば、介護要員は2025年度に34万人も足りない。15~64歳の「生産年齢人口」は、2050年にはピーク時の95年の6割しかいなくなる。
西川さんが起業したのは06年、東大大学院1年のときだ。バイオベンチャーでバイトし、仲間と事業をやることに魅力を感じた。「1年やってダメだったら就職すればいい」とバイト仲間を説得し、PFNの前身の会社を始めた。
社員約200人のPFNは、未上場ながら株式の時価換算で1千億円を超える。「ユニコーン」と呼ばれる数少ない日本企業だ。
大手の下請け仕事は一切やらない。にもかかわらず、トヨタ自動車が115億円を出資するのをはじめ、日立製作所や三井物産などが、この創業5年のベンチャーに目を注ぎ、資本提携を結んでいる。
その構図は、イノベーションに飢える日本経済のいまを象徴する。起業率は欧米より低く、新たな産業を生むのに必要な新陳代謝が進まない。日本が国際競争力を失った理由でもある。
PFN執行役員の長谷川順一さん(57)は、かつてソニーで、家庭用ゲーム機「プレイステーション3」の開発などを手がけた技術者だった。
日本経済がバブルに向かった1986年に入社。当時のソニーは「他社と違うことをやれ」という社風だった。だが平成に入り、米国や韓国との競争に敗れて業績が傾くと「経営者が技術を理解しなくなった」。
8年前、同僚の転職が続き「潮…