28日開会の第198回通常国会は「統計国会」の様相だ。今年は皇位継承や参院選など大きな政治日程が相次ぐことを見越し、国会を「安全運転」で乗り切るために政府・与党は提出法案を絞った。安倍晋三首相の施政方針演説も目玉を欠く内容となり、かえって統計問題に焦点があたる格好となった。
衆院本会議で約50分続いた首相の施政方針演説。「毎月勤労統計」の不正調査問題について、首相が「セーフティーネットへの信頼を損なうものであり、国民の皆さまにおわび申し上げる」と陳謝すると、野党からのヤジは一段と大きくなった。「アベノミクス偽装だ」「実質賃金が下がっているじゃないか」
統計問題をめぐって政府は国会への影響を最小限に抑えようと、厚生労働省の特別監察委員会の中間報告書を召集前の22日に公表した。ところが職員の聞き取りに厚労省の官房長が同席するなど客観性が疑われる事実が次々と発覚して、麻生太郎副総理兼財務相は記者会見で「それやるかねという感じはします」。閣内からも突き放した発言が出るほど問題は拡大の一途をたどっている。
4月に統一地方選、5月にかけて皇位継承、6月に主要20カ国・地域(G20)サミットの大阪開催、7月にも参院選と重要な日程が続く。大幅な会期延長が難しいだけに、もともと政府与党は「安全運転」を優先して法案提出数を58本に絞った。衆院を途中解散した場合を除いて過去2番目に少ない数で、官邸幹部は年明けに「通常国会は何もできない。すんなり終わらせる」と語っていた。
このため演説では、憲法改正について「国会の憲法審査会の場において、各党の議論が深められることを期待する」と述べるにとどめた。各党に具体案を国会に持ち寄るよう呼びかけた昨年と比べて後退。自民党の石破茂元幹事長は記者団に「ずいぶんトーンが落ちた」と評した。22日の日ロ首脳会談では進展がなかった平和条約締結に向けた対ロシア外交についても、プーチン大統領との会談内容を改めて紹介するにとどまった。
かわりに強調したのは、消費増税を控えた予算の「大盤振る舞い」。プレミアム商品券やポイント還元などを列挙し、「来年度予算では頂いた消費税をすべて還元する規模の十二分な対策を講じる」と主張。「政権交代前の3倍、6千億円を上回る土地改良予算」、国土強靱(きょうじん)化については「7兆円を投じ、異次元の対策を講じる」とした。
演説に政策面での新しさがない分、「統計問題」がなおさらクローズアップされる。首相は不正を陳謝したものの、真相解明や再発防止策などについては言及しておらず、今後の質疑で姿勢が問われることになる。(岡村夏樹)
野党は追及強めるも、連携に溝
厚生労働省による「毎月勤労統…