統計不正問題で、安倍晋三首相の看板政策「アベノミクス」の成果の根拠となる「数字」が揺らいでいる。30日の衆院代表質問で野党党首2人が政府を追及したが、首相は「賃金上昇」をアピールして不正の影響を否定した。だが統計に関する問題が続々発覚し、疑問は積み上がっている。
「都合のいい数字だけをつまみ食いし、都合良く成果を宣伝することばかりに腐心しているように見える」。国民民主党の玉木雄一郎代表は質問をこう切り出した。アベノミクスの効果の指標とされる厚生労働省の「毎月勤労統計」の不正調査問題が念頭にあった。
野党は、統計不正の狙いが賃金上昇を演出する「アベノミクス偽装」だったと主張。2018年1月以降に毎月勤労統計の名目の賃金上昇率が上積みされていた点を重視する。
18年6月の公表値は「3・3%増」。厚労省は「21年5カ月ぶりの賃金伸び率」としていた。問題発覚後に「2・8%増」と修正したが、17年と同じ事業所を調査対象とした「参考値」は「1・4%増」だった。総務省は、公表値よりも参考値の方が賃金動向の実態に近いとの見解を示している。
玉木氏は「違う人間の身長を比べて背が伸びたと言うような数字に意味はない」と指摘。「昨年6月に名目賃金が『21年5カ月ぶりの高い伸び率だった』という主張を撤回するか」と首相に迫った。しかし首相は「下方修正となった18年の毎月勤労統計の数値のみを示して、アベノミクスの成果であると強調したことはない」と主張。さらに国民民主を支持する連合が作成したデータを持ち出し、「5年連続で今世紀に入って最高水準の賃上げが継続している」と強調した。
ところがこのデータも首相にと…