タイの新党・国民国家の力党は30日、軍事政権のプラユット暫定首相ら3人を、3月24日に行われる総選挙の首相候補とする方針を明らかにした。プラユット氏らの了承を得て、期限の2月8日までに選挙管理委員会に届け出る。本命がプラユット氏であることは確実で、軍主導の政権の継続を目指す姿勢が明確になった。
8年ぶりの総選挙、タイで実施へ 先延ばしの末やっと
ほかの2人は同党の党首で30日付で工業相を辞任したウッタマ氏と、軍政のソムキット副首相。今回の選挙では、各党が3人まで首相候補を届け出ることができる。ソンティラット幹事長は30日、記者団に「(首相候補に関する)党の決定は市民の支持を集めるだろう」と述べた。
軍政の4人の閣僚が主要ポストを占めてきた同党はかねて総選挙後にプラユット氏を正式な首相に就けるシナリオを描いているとみられてきた。プラユット氏が首相候補になれば、総選挙では4年以上続く軍政への評価が正面から問われることになる。
今回の選挙では、親軍政派と反軍政のタクシン元首相派、民主党など双方に距離を置く勢力が三つどもえの戦いを繰り広げるとみられている。
◇
タイ軍事政権のウッタマ工業相ら4閣僚が29日、プラユット暫定首相に辞表を出した。30日付で辞任する。4人は親軍政の国民国家の力党の党首や幹事長など主要ポストに就いており、兼務に批判の声が上がっていた。
タイでは民政復帰に向けた総選挙を3月24日に行うことが決まり、国民国家の力党は選挙後、プラユット氏を正式な首相に就けようとしているとされる。4人は、軍主導の政権の継続に向けて選挙に専念することにしたとみられる。ウッタマ氏は29日、記者団に「党の活動に専念するのに適切な時期だ」と述べた。
閣僚を辞任するのは党首のウッタマ氏、幹事長のソンティラット商務相、副党首のスウィット科学技術相、報道官のコプサック首相府相。4人はこの間、公務と政治活動は分けているなどと弁明してきたが、「閣僚の権限を利用して選挙に向けた活動をしている」との批判が絶えなかった。(バンコク=貝瀬秋彦)