パキスタンでイスラム教を侮辱したとする冒瀆(ぼうとく)罪で死刑判決を受け、8年収監された末に無罪を言い渡されたキリスト教徒アシア・ビビさん(54)が近く、国外に亡命する見通しとなった。最高裁が29日、無罪判決に抗議するイスラム急進派の不服申し立てを却下したことで、アシアさんの出国制限が解かれた。支援団体によると、カナダが受け入れに動いているという。
アシアさんは2018年10月に無罪判決を受けて釈放された後も、急進派の殺害予告や不服申し立てで足止めされていた。アシアさんの娘は既にカナダに亡命しているという。
アシアさんは09年、イスラム教徒の隣人に対して預言者を侮辱する発言をしたとして逮捕され、死刑判決を受けた。だが隣人の証言はあいまいで、事件はでっち上げだと人権団体が指摘してきた。
パキスタンで冒瀆罪は死刑が適用される重罪で、乱用ぶりが国際的に批判されてきた。人口の約96%を占めるイスラム教徒が少数派の商売敵や、けんか相手を冒瀆罪でおとしめる例が後を絶たない。
代表例とも言えるアシアさんの事件では、冒瀆罪の見直しに言及した閣僚が射殺されたり、恐れをなした裁判官が担当を外れたりして波紋を広げてきた。無罪判決が出た際は急進派のデモ隊が道路を封鎖し、首都機能が数日間まひする騒ぎに発展した。(イスラマバード=乗京真知)